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 健康なヒトのiPS細胞から作った神経の働きを支える細胞を移植し、神経の難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行を遅らせることに、京都大などのグループがマウスで成功した。移植しないマウスより、寿命が1割弱延びた。ALSの根本的な治療は見つかっておらず、今後、治療に応用できる可能性があるとして期待される。

 米科学誌ステムセルリポーツ電子版に27日発表する。ALSは手足や舌、呼吸に必要な筋肉がやせて動かせなくなる病気。筋肉を動かす神経細胞の障害が原因とされる。進行を遅らせる薬はあるが、効果は限られており、iPS細胞などを使った再生医療の研究が進んでいる。ただ、神経細胞そのものは、移植しても死んでしまうなど、障壁が高いことがわかっていた。

 京大iPS細胞研究所の井上治久教授らは、神経細胞の働きを支えるグリア細胞に着目。遺伝子変異でALSを発症したマウスの腰の背骨内に、iPS細胞で作ったグリア細胞に変化する前段階の細胞を移植した。すると、移植しない場合の平均寿命150・4日が11・8日延び、運動機能の衰えも遅かった。

 移植した細胞は神経細胞を長生きさせるたんぱく質を分泌しており、井上さんは「神経細胞とグリア細胞を組み合わせて移植すれば、症状の改善につながる可能性もある」と話す。海外では、神経細胞にもグリア細胞にもなれる神経幹細胞を移植する同様の研究が実施されている。(阿部彰芳)