松坂桃李
答えがないことだからこそ苦しみました
たった一度だけ、死んでしまった人と会うチャンスを与えてくれる使者の物語『ツナグ』。様々なバックグラウンドを背負った人たちのツナグを担いながら自らの家族への思いも変化させ、心の成長を遂げる渋谷歩美役を演じた松坂桃李がリレーインタビュー第2回目に登場!橋本愛からの質問には何て答える?そして次回登場の桐谷美玲への質問も要注目!!
現場以外でも敏感になっていたキーワード
──死者との再会を叶えるツナグという役柄は、どうつかんで行きましたか?
【松坂】 前もって何かを考えて用意するということはしなかったですね。これは平川雄一朗監督から言われたことでもあったんですけど、現場で感じたことや、内側から湧き出てくる感情を大事にしようと心がけていました。だから現場では、このあと役がどうなっていくのか、というような先の展開を計算したりとかは一切しないようにしていて。むしろ持ってきたものを一度捨てるくらいの姿勢で、歩美という役と毎日向き合っていました。
──横柄な男性から女子高生、一途で弱気なサラリーマンなど、様々な境遇の人と接しながら、歩美自身もツナグの存在の意味を問い続けます。
【松坂】 歩美は最初は素直でイイ子。両親にまつわる過去の心の傷は持っているけれど、基本的にはおばあちゃん思いで、ツナグという仕事を受け継ぐことも重く捉えていないですよね。「死者なんているのか」なんていう疑いも持ってるくらい。でも、実際にツナグをやっていくなかで、辛いこともいいことも両方経験していきます。そうして、最初は物事に対していつも受身だった彼が、自分から決断をできるように精神的な成長を遂げていくんです。それはとても大きいことだと思いました。ツナグをすることで、彼はひとつ階段を上がったんだと思います。
──“死”が身近にある役なので、撮影期間中はその意味について考えることも増えたんじゃないでしょうか。
【松坂】 確かに現場以外でも、“死”というキーワードに敏感になっていたと思います。だから精神的にきついと思うことも多かったですね。どこかで起きた事故のニュースがテレビから聞こえてくると、やたら気になったりして。「遺族の方たちはどうしているんだろう」とか、考えたりするんですよね。そういう部分でいつも以上に気持ちの重さは感じていました。
──役が普段の生活にまで影響することは多い方ですか?
【松坂】 いつもはそんなことないんです。今回も影響したというより、考える時間が増えた、という感じですね。「今、歩美だったらどう思うだろうか」とか、ささいなことでも考えることが多かったです。でも当然答えなんて出ないわけです。答えがないことだからこそ、苦しみました。なのに自分で勝手に追い込んじゃうんですよね。
ぬるま湯に浸かってばかりじゃいけない
──追い込むことが、松坂さんにとっていい変化をもたらすことなのかもしれませんよね。これまでお仕事を続けてきて、自ら成長を実感することはありましたか?
【松坂】 ほぼ毎日変化はしているんだと思います。昨日より今日、今日より明日。そのために挑戦することはやめちゃいけないと思っています。きっとそういう意識をなくしてしまうと、このお仕事はつまらなくなってしまうんじゃないかな。何ていうんだろう……ぬるま湯に浸かってばかりじゃいけないと思うんですよね。「すっごく熱そうなお湯だけど入ってみないとわからない」、そういう場所に飛び込んで行かないと、きっとおもしろみがなくなると思います。この先も現場を経験していく予定(笑)ではあるので、ずっとその気持ちは忘れたくないなと思いますね。
──熱そうなお湯に入るときの気持ちは?
【松坂】 終わった後の、自分の変化を求めています。いろいろな作品に出演させていただいて、いろいろな引き出しを増やす……。それが今後も自分には必要なのかなと考えています。
──主演という大役についてはどうとらえていますか?
【松坂】 作品はたくさんのプロフェッショナルの方がいて成り立っているものなので、自分はそのなかのパーツのひとつだと思っています。それぞれの役割があるなかで、僕は「俳優部のひとり」という感覚です。作り手それぞれの存在があって初めて作品が作れるわけですから、常にそういう方たちへの感謝は忘れてはいけないなと思っています。さらに言えば、受け取り手の存在も同じですね。観てくれる人がいるからこそ、僕らは映画を作ることができる。感謝の気持ちを持つことは、人間的な意味でも大事なことなんじゃないかなと思います。
──主演らしい!ということを現場で何かしませんでしたか?
【松坂】 ないですね(笑)、というかまったく余裕がなかったです。……あ、でも一度だけケータリングを入れたことがありました!希林さんとふたりのシーンの際に、前もって何が良さそうかリサーチしておいて。けっこう暑い日だったので、野菜中心で、そうめんとかもついているご飯を約70名分ほど用意させていただきました。でもそれくらいで、後はとにかく必死に過ごしていました(笑)。
(文:奥浜有冴/撮り下ろし写真:片山よしお)
“ツナグ”連載 Q&Aリレー
キャストを“ツナグ”Q&Aリレー!前回の[From 橋本愛]→[To 松坂桃李]の質問への回答は……。
◆橋本愛からの質問
改めまして、お元気ですか(笑)?毎日お忙しいなか、あまり取れないとは思いますが、お休みの日はどんなことをされていますか?今ハマっていることがあったら聞いてみたいです。
◆橋本愛への回答!
えっと……、元気です(笑)!映画が大好きで、休みの日は映画館によく行きます。先日、橋本さんが出演していた『桐島、部活やめるってよ』も観ましたよ。すごくよかったです!
◆[From 松坂桃李]→[To 桐谷美玲]への質問は……。
桐谷さんはニュースキャスターとしてもご活躍されていますが、新聞とかどのくらい読んでいらっしゃいますか?
映画情報 『ツナグ』
死んでしまった人に一度だけ会えるチャンスがあるとしたら、あなたはどうしますか?“ツナグ”とは、生きている人が会いたいと望む、すでに死んでしまった人との再会を仲介する“使者”を表す言葉。生者にとっても死者にとっても再会の機会はたった一度だけ。
半信半疑で依頼をしてくる人たちの前に現れる使者は、ごく普通の男子高校生・歩美(松坂桃李)だった。横柄な態度で、癌で亡くなった母・ツル(八千草薫)に会うことを希望する中年男性・畠田(遠藤憲一)。喧嘩をしたまま自転車事故で死んでしまった親友・御園(大野いと)に聞きたいことがある女子高生・嵐(橋本愛)。突然失踪した恋人・キラリ(桐谷美玲)の安否を確かめたいサラリーマン・土谷(佐藤太)。
歩美は、実はツナグを祖母のアイ子(樹木希林)から引き継ぐ途中の見習いで、その過程で様々な疑問を抱く。死者との再会を望むなんて、生者の傲慢かもしれない。間違いかもしれない。果たして会いたかった死者に会うことで、生きている人たちは救われるのか。人生は変わるのだろうか。そして死者は……。その疑問は、自身の両親の不可解な死の真相へも向けられていく――。
監督:平川雄一朗
出演:松坂桃李 樹木希林 佐藤隆太 桐谷美玲 橋本愛 大野いと 遠藤憲一 別所哲也 本上まなみ 浅田美代子 八千草薫 仲代達矢
2012年10月6日(土)全国東宝系ロードショー
(C)2012 「ツナグ」製作委員会
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