2013年夏、「銀の滴 降る降る まわりに ー首里1945ー」が全国公演へのスタートを切った。

戦後68年(8月15日で69年)、沖縄戦からも68年である。なぜ、今、沖縄なのか?まだ、沖縄なのか?

劇団は創立71年、文化座が始めて沖縄を題材に取り上げた「ちぎられた縄」は創立15周年の企画として上演されている。

傷つき、立ち上がり、そして今も戦う沖縄を、半世紀を超え、今も文化座が沖縄にこだわり続ける理由がどこにあるのか。

過去の作品と共に掘り起こしてみたいと思う。

 

 

   沖縄全島がアメリカの占領下に置かれる。
   
 沖縄、日本から切り離され、米軍の施政権下に置かれる。
   

ちぎられた縄(公演NO18 創立15周年記念)
作・火野葦平 演出・佐佐木隆

戦後、占領下の沖縄を画き、その問題を始めて取り上げた作品。
沖縄島民の深刻な苦悩を改めて心に刻んだ作品として反響を呼ぶ。
千秋楽には観客が溢れ、会場であった一ツ橋講堂の扉を開けたままで上演するという、前代未聞の公演となった。

 

「ところが僕の心の中に沖縄に対して、戦前内地の人間があんな具合にやっておいて、戦後またああいう状態になっていると云うのがなんともかんとも申し訳なくて、又、我々も満州に行く前は、沖縄と蒙古を志願してるんですよ。ところが行けなくなっちゃったでしょう。行ってれば死んでるかも知れないけど、まあそういう因縁もあって、どうしてもうちで取り上げなきゃと思い火野さんにあれをたのんだんですよ。」(佐佐木隆)

 コザ暴動
   

映画「沖縄」

(佐々木愛主演映画作品・共同映画・「沖縄」製作上映委員会)

沖縄の伊江島の土地取り上げ反対闘争をモデルとして作られた。
戦後24年間アメリカの占領下にあった「沖縄の歴史と真実」

 アメリカと琉球政府が一体となって基地増強のため土地を収奪する姿、収奪される農民の苦悩する姿、利権を貪る資本家(基地賛成派)の姿を描いた作品。

   
 沖縄、日本に復帰する。
   

海の一座(公演NO78)
作・謝名元慶福 演出・八木貞夫

元教師で集団自決の秘密を知る旅芸人の父、真実を見極めようとする娘、新米の旅芸人と3人で沖縄の島々をサバニ(くり舟)に乗って巡り歩く3人だけの旅芸人一座。次第に明らかになる父の体験が戦後日本が敢えて目を瞑ってきたものをあぶり出す。

 
   

「天皇のために死を強制したのは、大和の軍国主義だけだったのか、沖縄人の支配層や教師や大人はどうだったのか」

「そういった内なる戦犯意識に深く切り込んだ」

(儀間比呂志インタビュー)

 
   

音楽劇 ハブの子タラー(アトリエ公演)
作・謝名元慶福 演出・小森安雄

ハブの子「タラー」が三線と仲間と共に「怖い人間の世界」に旅に出る。
その中で大切なものに気づき、成長していくタラー。
沖縄の民話をもとにした冒険の物語が子供達から熱烈な歓迎をうけ、92年まで全国を巡演、2004年にも再演されている。

 

 
   

若夏に還らず(公演NO113)
原作・森口豁「最後の学徒兵」 作・堀江安夫 演出・佐々木雄二

B・C級戦犯として、戦後、処刑された学徒兵・田口泰正。
個人の意志も自由もなく、命令に従って捕虜を殺し命令に従って処刑される。
「石垣島事件」の真実を求め彼の人生を追体験する−私−。

 
   

「客席には多くの若い人たちの姿があった。彼らと、田口という人間、彼が生きた時代について語りあってみたい。そんな思いをいだかせるシバイだった。」(河野優司・高校教諭)

   

月の真昼間(公演NO128)
原作・森口豁「子乞い 沖縄孤島の歳月」脚本・杉浦久幸 演出・原田一樹

沖縄の日本復帰から十年が経った一九八二年、八重山諸島の離島、鳩間島。
唯一の公共機関である小学校の廃校問題から起こる「子乞い」騒動に奔走する大人たちを通じて、日本復帰に伴う内地との格差、共同体・地域の問題に切り込む。「共生共死」とは−

 
   

「(前略)日本から捨てられたも同然の離島の、負の由来は最小限にとどめ、どっこい生きている島民たちの、共存意識と楽天性を軽妙に転がして話を進めて行く。(中略)それに関連して語られる仕事難や医療、老齢化といった厳しい実情が、離島という特殊性を超えているところに説得力がある」(北川れい子「沖縄タイムス わたしの舞台評」より)

 

銀の滴 降る降る まわりにー首里1945ー

(公演NO132)


作・杉浦久幸 演出・黒岩亮

沖縄の糸満にある「南北の塔」。第二次世界大戦下の沖縄では、北海道より送り込まれた多くのアイヌ兵が戦い、命を落としていったという事実が刻まれている。
鉄砲を持たない部隊、炊事班に配属された、北海道兵、アイヌ兵、沖縄兵−
沖縄戦という究極の修羅場の中で彼らは何をみたのか。

 
   
   

貘さんがゆく(公演NO137)
作・杉浦久幸 演出・原田一樹

明治・大正・昭和と生きた、沖縄出身の「放浪詩人」山之口貘。
「貧乏詩人」「精神の貴族」などと呼ばれ、困窮した生活の中で多くの仲間たちや周りの人々に愛され続け、その一生を詩作に捧げた彼の故郷への思いとは。
推敲の鬼と言われる貘さんの紡ぎ上げた詩を通じて、戦後変わりゆく沖縄を描き出す。

 
   
   
銀の滴 降る降る まわりにー首里1945ーが全国に向け、再始動。