東京都と隣県を隔てる境界線。ふだん意識することはあまりないが、線をまたぐと行政区域が変わり、受けるサービスやいざというときの連絡先などが違ってくる。この境界線、建物の上を通っていたり、それまで川沿いだったのに突然、川を離れたりと一筋縄ではいかない。境界をまたぐ施設では「住所は東京都、電話番号は神奈川県」といった現象も起きている。飛び地や県境など境界を巡る謎を追った。
よみうりランドは東京都か神奈川県か
東京都稲城市と川崎市の境界にまたがる遊園地、よみうりランド。広大な敷地内には遊園地のほか、病院や入浴施設、ゴルフ場などがある。
実はこのよみうりランド、住所は東京都なのに電話番号は044、つまり川崎市の市外局番になっているのだ。どういうことか。運営会社に聞いてみた。
「本社の所在地が東京都稲城市にあるので住所は東京都になるのですが、遊園地の施設の大半は川崎市にあり、電話交換機があるので、市外局番は044になったようです」
同ランド内の他の施設も同様だ。「よみうりランド慶友病院」では建物の中を境界線が通っているが、住所は稲城市で電話は044。入浴施設「よみうりランド丘の湯」は完全に稲城市側に位置しているものの、電話番号はやはり044になっている。
よみうりランドにはもう一つ、地理上の不思議がある。川崎市側の敷地内になぜか、稲城市の飛び地があるのだ。さっそく、現地を訪れてみた。
遊園地の入り口から歩いて15分ほど。京王よみうりランド駅へと向かう道の途中に、その場所はあった。慶友病院の北側、読売ジャイアンツ球場の隣にあるその土地は、地図を見ながら歩かないとわからないほど微妙な位置にある。
地図と照合してみたところ、飛び地の大半は空き地になっていた。よみうりランドの臨時駐車場として、混雑時のみ使われているようだ。