ユニバ・リポート

おもてなしと「イネーブルウェア」--TEPS2016

写真=TRONイネーブルウェアシンポジウムのパネルディスカッションのようす

 コンピューター技術を使って障害者の自立支援に取り組む第29回TRONイネーブルウェアシンポジウム(テップス2016)が17日、東京都港区の東京ミッドタウンで開かれた。TRONイネーブルウェア研究会(坂村健会長)の主催。

     2020年東京五輪・パラリンピック大会で実現する「おもてなしとイネーブルウェア」をテーマにした今年のシンポでは、坂村会長がスマートフォンで家電製品などを制御できるIoT(モノのインターネット)技術を使うことで利用者個人の属性に合わせたサービス提供が可能なことを説明。外国人向けの多言語対応や、車椅子利用者には段差のない経路を案内する一方、視覚障害者には点字ブロックのある経路を案内するなどと話した。

     後半のパネルディスカッションには、アテネ・パラリンピック競泳銅メダリストの杉内周作さん(視覚障害、富士通)と日本トライアスロン連合(JTU)パラトライアスロン代表チームの富川理充ヘッドコーチが登壇。五輪に劣らないパラリンピック競技の迫力や、五輪とパラリンピックの違いについて、パラリンピックでは障害の種類や程度によって細かくクラス分けがあることなどを説明した=写真。

     パラ競泳について説明した杉内さんは、肢体障害は1~10クラス、視覚障害は11、12、13の3クラス、知的障害は14の1クラスがあるものの、これらの分類に入らない身体障害者手帳所持者はパラリンピックに参加できないことを指摘した。その上で杉内さんは「日本国内にはS21というこれらのカテゴリーに入らない障害者も参加できるローカルルールがある」と話した。

     今年のリオデジャネイロからパラリンピックの正式競技になったパラトライアスロンについて説明した富川さんは「水泳、自転車、長距離走を連続してこなす超人的なスポーツであるトライアスロンチャレンジャーに障害の有無は関係ない」と力説した。さらに「実はこれまで一般のトライアスロン競技大会に障害者が参加することがあったが、パラリンピック競技になったことで一般の大会に参加することが難しくなった」とパラリンピックの弊害を訴えた。

     テップスでは例年、聴覚障害者向けのパソコン要約筆記と手話通訳が情報保障として提供されている。30回を迎える来年こそは、協賛企業などが開発し、実用化が始まっている音声認識によるリアルタイム字幕表示など人的支援に頼らないトロンならではのイネーブルウェア技術の導入を期待したい。【岩下恭士】

    動画=「TEPS 29th」基調講演とパネルディスカッション