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直近の芥川賞候補作になった…

 直近の芥川賞候補作になった「ビニール傘」(新潮社)は社会学者の岸政彦(きしまさひこ)さんが日雇い労働者として働いていたころの経験を基に書き上げた短編小説だ。登場人物はコンビニに入ってビニール傘を500円で買う▲国内で年間約1億3000万本販売される傘のうち大半がビニール傘と言われる。価格の安さは魅力だが、使い捨ての代名詞にもなっている。小説ではさみしさや不安を象徴する小道具の役回りを担う▲その10倍以上の値段がついたビニール傘を製造販売している会社が東京・浅草にある。江戸時代にたばこ商として創業した「ホワイトローズ」は約60年前、世界で初めてビニール傘の開発に成功した。人気商品となったが、普及によって低価格化を迫られ、売り上げは落ち込んだ▲転機は三十数年前、選挙を控えた政治家からの注文だった。条件は大きくて透明で丈夫なこと。雨中の遊説でも候補者の姿を隠さず、強い風にも耐えられる商品は高価格にもかかわらず、口コミによって広がり、宮内庁からも注文が入るようになった。イチロー選手も愛用する▲日常生活で視界を遮らないビニール傘を必要としている人たちがいる。高齢者や障害者にとって雨の日の外出は転倒や衝突の危険があり、神経を使う。すれ違う時に相手が道を譲ってくれる機会が増え、家族も安心して送り出してくれるようになった▲社長の須藤宰(すどうつかさ)さんは「困っている人がいて、その悩みを解消する商品を作っているうちに、さまざまな人たちの役に立つようになった。必要としている人たちに届けたい」と話す。たかがビニール傘、されどビニール傘なのだ。

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