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雪と氷の絶景の村 しかりべつ湖コタン(北海道鹿追町・上士幌町)

 1980年。時の若者たちが完全結氷した然別湖に新しい遊び場を開拓してから40年近くの歳月が流れた。以来、毎年厳冬期の湖上に現れる雪と氷の幻の村「しかりべつ湖コタン」。然別湖の圧倒的な自然と寒さ。そして、雪と氷の美しさに魅せられた人々によって、今も進化の速度を緩めることがない。アマチュアカメラマン、Mattsuさんの写真・文で紹介する。

写真・キャプション Mattsu

しかりべつ湖コタン。雪に閉ざされ閑散とした温泉街は、寒い冬を逆転の発想によって変えていった。年間4万人以上が世界各地から訪れるイベントを、歴史を知る看板が見守り続けている

しかりべつ湖コタン最大の武器は集う人々の力。巨大な建造物は、基本的に人の手によって積み上げられていく。素材である雪を固め、積み上げて作るイグルー(氷の家)には、人々の思いがこもっている

イヌイットが作っていたイグルーにイメージをもらい、研究を重ねて作り上げたオリジナルの工法。雪と氷以外の骨組みや柱は一切使用しておらず、春には全てが湖へと溶け帰っていく

村の建物のもとは天然の雪と氷。雪氷研究者も注目する、大雪山に降り積もる北海道有数のパウダースノーが、美しい建物に形を変えていく。一枚一枚が美しい雪の結晶。全てが大切な宝物

12月上旬から5月中旬までの約半年の間、湖は氷に覆われる。厚さは最大1㍍近くに達する美しい氷をふんだんに使用して、村の柱や壁を作っていく。天然の氷を使うからこそ、見ていただく価値がある

湖を囲む、懐深く豊かな森。数万年の歳月をかけて育まれた命を優しく包み込んでいる。しかりべつ湖コタンは、この深く美しい森を借景として、自然の一部に溶け込む景観を追い求めている。華美な照明は使わない

人々、寒さ、雪と氷……私たちは恵まれている。だからこそ、妥協せずに美しい物を作り上げるのだ! そういう気持ちが形になった。コタンの門をくぐった全ての人に見ていただきたい、氷の空間

ここが温泉地だったからこそ実現できた、世界唯一の絶景露天風呂〝氷上露天風呂〟

毎年日本とスウェーデンで雪と氷の部屋を作っているアイスアーティストが手がけた、すてきな空間〝アイスバー〟

天然の雪と氷と炎が奏でる空間〝アイスチャペルのキャンドルナイト〟。どれをとっても、ここだけにしかない空間。寒さを忘れて白銀の魔法に魅了される時間を過ごす

完全結氷した湖上に新しい遊びを求めた三十数年前の人々。彼らの斬新な発想は、後に続く僕らの心にいろいろなことを問いかけてくる。だから歩みを止めない。大の大人が真剣に挑む、究極の冬遊びは終わりがない

イヌイットたちが使ったイグルーの原型をもとにして作るアイスロッジ。シンプルな形状の中に快適に過ごすための工夫がつまっている。ここは湖上。ベッドの下は水深60㍍。ここでしか聞けない不思議な音の世界

天然の氷には、無数の小さな気泡を見ることができる。微生物が封入されていることもある。整然と積み上げられた氷に刻まれた、自然の刻印を見つめる時間。自然からのプレゼント。豊かな時間を味わえる場所でありたい

僕らが営み続けているのは、冬だけに現れる幻のような、小さな小さな雪と氷の村。大きなイベントでは決して味わえないような、素朴で、どこか懐かしい、異国のような雰囲気を味わえるどこにもない場所

しかりべつ湖コタンの町並みを歩いたら、感じてほしい。時に厳しく、時に美しい自然のありのままの姿。そして、その自然の力を借りて築き上げた村の姿。自然の力を借りて営みを続けるのは、ここも、皆さんが住んでいる街も同じ。自然と人との接点を、極寒の村で見つめていただければ、ありがたい

撮影者の横顔

 Mattsu(松本宏樹)。北海道然別湖を中心に活動するアマチュアカメラマン。本業の自然ガイドの傍ら、主に北海道内の自然の姿を記録し続けている。しかりべつ湖コタンではイグルービルダーとして活動。

 代表作品 ポストカードブック『ありがとう』▽2013年鹿追町フォトコンテスト 大賞受賞▽北海道の観光シーンに関する写真提供▽映像制作会社各社への写真、映像提供

           ◇           

 「ニッポン瞬・彩」は、各地のカメラマンが地元ならではの目線で撮った「わが街自慢写真集」です。

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