ヒトの皮膚などの細胞がiPS細胞(人工多能性幹細胞)に変わる道筋の途中に、iPS細胞になるために必ず経なければならない「関門」のような状態が存在することを、京都大iPS細胞研究所の高橋和利講師らが突き止めた。「関門」を通りやすくなるように遺伝子操作を加えると、iPS細胞の作製効率が約40倍に高まった。

 山中伸弥教授も名を連ねた論文が英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ電子版に24日掲載された。iPS細胞は体の細胞で四つの遺伝子を働かせるとつくれるが、実際にはほとんどの細胞が途中で元に戻ってしまう。高橋さんらはiPS細胞になれる細胞だけを判別し、その過程を詳しく観察。最初に働かせる4遺伝子とは別の、特定の遺伝子が働く状態があることを発見した。この遺伝子の働きを初めから強めてやると、iPS細胞になる効率が大幅にあがった。

 この状態は、受精後1週間の胚(はい)に一時的に見られる細胞とよく似ていた。高橋さんは「体の細胞が初期化するときの関門が、受精卵が分化していく途中段階と似ているのは驚きだ」と話している。(阿部彰芳)