がんと診断された患者が1年以内に自殺するリスクは、診断されていない人の約20倍とする調査結果を国立がん研究センターの研究班がまとめた。研究班は、診断直後に適切なケアをすることが重要としている。

 研究班は9府県の男女約10万人(調査開始時40~69歳)について、1990年から2010年まで追跡調査した。この間に自殺したのは561人、自殺の可能性もある不慮の事故などの外因死で亡くなったのは755人。このうち、1年以内にがんと診断されていたのは自殺が13人、外因死が16人だった。

 がんと診断されていない人と比べた場合、診断後1年以内の患者が自殺するリスクは23・9倍、外因死のリスクは18・8倍高かったとしている。診断から1年以上経つと、いずれのリスクもほとんど変わらなかったという。ただし、診断後1年以内に自殺などをした人の数はわずかなため、この調査では約20倍という高い値になった可能性があると説明している。

 担当した国立精神・神経医療研究センターの山内貴史研究員は「海外の研究でも診断直後は自殺のリスクが高まる傾向がある。診察から1年間は、治療によって生活が大きく変化し、ストレスが強まる。心理的なケアのほか、就業対策など社会的な支援をする必要がある」と話している。