クローズアップ2013:年間自殺、3万人下回る 若者対策は置き去り

毎日新聞 2013年03月30日 東京朝刊

 内閣府と警察庁が今月公表した昨年の自殺統計で、自殺者総数が15年ぶりに3万人を下回り2万7858人となった。自殺防止策を自治体の責務と位置づけた2006年の自殺対策基本法施行後、大都市を中心に打ち出された予防策、そして同じ年に成立した改正貸金業法など多重債務対策の2本柱が奏功したとみられる。だが、対策が手薄だった若年層は就職難で自殺する大学生が増加。深刻な状況は依然続いている。【井崎憲、苅田伸宏】

 ◇「就活失敗、全否定された」

 「採用選考に落ちると、自分の全てを否定された気分になる」。富山大の「学生なんでも相談窓口」には、就活生のこんな声が寄せられている。08〜09年に学生の自殺が相次いだことを受け、10年4月に相談窓口を設置。相談員が学生の悩みに耳を傾け、病院につなぐこともある。

 若者の自殺を考える上で、特に見逃せない要因が大学生を中心とした就職難だ。内閣府によると「就職失敗」を理由とする10代と20代の自殺は07年に60人だったが、景気が悪化した08年のリーマン・ショックを挟み12年は158人へと急増した。

 職業別に見ると、「学生・生徒等」は90年代後半の600人台から00年代に入ると800人前後となり、昨年までの5年間は1000人前後で推移。長期的には増加傾向にあるが、富山大のような取り組みは一部にとどまっている。

 政府や自治体の対策は中高年層に重点が置かれていた。昨年の39歳までの自殺者数は全体の3割弱の7368人。前年から1000人以上減ったものの、内閣府担当者は「景気動向や雇用状況に左右される。今後も予断を許さない」と話す。

 危機感の背景には、日本の若者の自殺による死亡率の高さがある。内閣府の12年版の自殺対策白書によると、15〜39歳の各年代(5歳ごと)の死因の1位はいずれも自殺。比較可能な15〜34歳で見ると、先進7カ国で日本にしか見られない傾向だ。更に20代の死亡者全体の半数は自殺で、深刻さが際立っている。

 就職後に低賃金や重労働などに直面することも少なくない。厚生労働省のまとめでは、精神障害による11年度の労災請求件数は1272件と3年連続で過去最高を更新。請求者のうち202人が自殺し、30代以下が過半数の108人を占めた。昨年見直された国の自殺総合対策大綱には、ハローワークの窓口で心の悩みの相談に対応することや、ニート状態にある人の自立支援が盛り込まれた。ただ、大学生や若手社会人に特化した有効な対策は見いだせていない。

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