エンタメ【鑑賞眼】英国王のスピーチ 感動を呼ぶ近藤芳正の献身ぶり2012.9.1 08:40

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【鑑賞眼】
英国王のスピーチ 感動を呼ぶ近藤芳正の献身ぶり

2012.9.1 08:40 舞台・ミュージカル

 映画はアカデミー賞作品賞などを受賞し、日本でも150万人を動員した大ヒット作だが、もとはデヴィッド・サイドラー原作の戯曲作品。その日本語版舞台初演だ。

 英国王ジョージ6世(1895~1952年、東山紀之)が吃音(きつおん)を克服し、第二次大戦開戦のスピーチを成功させた秘話を、こなれた脚本(上演台本・倉持裕)と洗練されたスピーディーな演出(鈴木裕美)で描く。打楽器の生演奏と松井るみの美術も効果的で、うまい役者がそろう。

 国民の前で語る義務を負い、“俳優”たることを求められた吃音の王を、俳優になりそこなった言語聴覚士ローグ(近藤芳正)が導く皮肉。ともに劣等感を内に秘めた対照的な男同士の、立場を超えたぶつかり合いが、舞台劇らしい緊迫感を高めてゆく。

 王にはエリザベス(安田成美)、ローグにはマートル(西尾まり)という妻がおり、2組の夫婦の物語も並行する。惜しむらくは俳優の力量の差で、肝心の国王夫妻より、ローグ夫妻の情愛の深さが存在感を放っていることである。

 吃音の苦悩を分かち合う夫婦の物語は、日本では近松門左衛門の「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」が知られる。極端に言えば言葉が不要な絵師ですら、あふれる思いを言葉にできぬ悔しさに、のどをかきむしる。いわんや国民に語る義務のある、吃音の王の苦悩はいかばかりか。東山は難役に全力で格闘しているが、見た目のスマートさも“邪魔”になり、切実さがもう一つ。安田は映像の演技。

 むしろローグが、あの手この手で王の吃音を克服させようと寄り添い、一喜一憂する様が感動的だ。異邦人で、医師にもなれない中途半端さも繊細に演じ、それを大きな心で包み込む妻の愛情の深さも心に残った。有福正志、ラサール石井らも好演。9日まで、東京の世田谷パブリックシアター。(飯塚友子)

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