エンタメ【鑑賞眼】キャラメルボックス 「アルジャーノンに花束を」2012.8.4 07:54

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【鑑賞眼】
キャラメルボックス 「アルジャーノンに花束を」

2012.8.4 07:54
チャーリイ(多田直人、左)とアリス(渡邊安理)の心の触れ合いも丁寧に描かれる (伊東和則撮影)

チャーリイ(多田直人、左)とアリス(渡邊安理)の心の触れ合いも丁寧に描かれる (伊東和則撮影)

 ■描かれる感情すべてが人間社会の縮図

 結成27年の劇団キャラメルボックスが、今年初の新作として挑むのは、世界的名作「アルジャーノンに花束を」。「社会的意義は考えていない。ただ、この作品が好きだからやりたかった」と脚本・演出=真柴あずきと共同=の成井豊(50)は語るが、「幸せとは何か」を突きつけるストーリーは、今という時代にしっかり合致した。

 原作では知的障害を抱える主人公、チャーリイ(阿部丈二と多田直人のダブルキャスト)の経過報告という形でつづられる物語を、出演者が原文を次々朗読する劇団の得意とするスタイルで再現。チャーリイの知的レベルが一目瞭然となるこの手法は、原作の風合いをそのまま伝え、観客にも親切だ。

 知的障害者を家族に持つ苦悩。障害者に向けられる直接的な嫌がらせ。優秀な頭脳を持つ人間の優越感。描かれる感情のどれもが人間社会の縮図といえるだけに、観客は辛(つら)くともこの負の感情を受け入れざるを得ない。そして、最後には自身に置き換えて考える。幸せとは何か、を。

 女性教師のアリス(岡内美喜子、渡邊安理)は「高い知能を持つより、もっと大事なことがある」と涙ながらに訴えるが、この根源的な問いの答えはむしろ、「幸せとは外から与えられるものではない」というチャーリイの生き方にこそ示されている。

 小手先の工夫を廃し、ひたむきに演じれば演じるほど説得力が増す舞台。前作「無伴奏ソナタ」で急成長した多田が、存在感たっぷりにチャーリイの激動の人生を演じきった。その多田に真正面からぶつかった渡邊は、市井の人間の善意を嫌みなく代弁し好印象。

 12日まで、東京・池袋のサンシャイン劇場。神戸公演(16~24日)あり。(道丸摩耶)

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