1年半の間に70本以上の動画をUP。“少年T”としてWeb上で絶大なる支持を集めていた佐香智久。メジャーデビュー後も“癒しの声の神”と称され、独自の世界観を紡ぎ続ける、その繊細な音楽性&人間性に迫ってみた。
単純に自分の歌をみんなに聴いて欲しかった
――Webの動画サイトへ自分の曲と歌を投稿しはじめたきっかけは?
【佐香智久】 高校の3年間はずっとバンドをやっていたんですけど、卒業してからはアコギを持って1人で活動を始めまして。とりあえず、ストリートライブをしようと思ったら札幌なので寒くて(笑)、僕が耐えられても聴く人には酷だなと思ってやめたんですよ。で、どうしようかと考えているときに動画サイトに自分の曲をUPしている人がいて、これなら自分もできると思って始めたんです。
――プロ志向はその頃から?
【佐香】 いや、正直そんなつもりは全然なくて、単純に自分の歌をみんなに聴いて欲しかっただけ。メジャーデビューの話をいただいて初めてそういうのもいいかもってプロを意識したんです。
――とはいえ、投稿回数が1年半に70本以上、総再生回数が1005万回超えという記録はすごい。そこで“イケるかも”とか思わなかったんですか?
【佐香】 急に“総再生数”とか数字で言われてもって感じでしたね。ネットでやっていたから、聴いている人の顔がリアルに思い浮かばなかったんです。でもあるとき、路上ライブをやってみようと思って告知したら、150人ぐらいの人が来てくれて。そこで初めてこれだけの人が自分の歌を聴いてくれているんだなって実感しましたね。
――メジャーデビュー後は、自分のなかで何か変化はありましたか?
【佐香】 曲作りと歌うことだけに専念できるのはすごくありがたいなと思いました。でも、音楽作りに対する気持ちは変わらないし、メジャーデビューして意気込むことも特になくて。僕、普段からあまり喜怒哀楽がないというか、人間味があまりないんですよ(笑)。
胸に秘めちゃうタイプだからこそ、歌にしているんだと思う
――いえいえ(笑)。新曲の「ずっと」を聴くと、人を好きになる純粋な想いや情熱がすごく伝わってきますよ。
【佐香】 「ずっと」はいつも気持ちを伝えずに終わる、自分の恋愛体験を正直に書いたんです。僕、同年代の女性と話すのが苦手というか緊張しちゃうんですよ。だから、話しかけられても困っちゃうし、好きになっても伝えられない。それは幼稚園生の頃からで、中学・高校で恋愛しても結局言わないままで。そうやって胸に秘めちゃうタイプだからこそ、こうやって歌にしているんだと思う。僕、少女マンガが大好きなんだけど、それも好きなのに好きって言えない少女マンガ独特の世界観に共感するからなんですよね。
――まるで乙女のよう(笑)。そういう部分は、歌詞を書き始めても変わらない?
【佐香】 前はもっともっと内気な歌詞だったけど、この曲みたいに“いつか届くといいな”って希望を持って背伸びして書いているうちに成長した気はします。あと歌を歌い出してから僕を見る周りの目も変わってきて。親には「あんたもちゃんと恋愛していて良かった」って言われたし、知り合いには「佐香君ってよくわかんなかったけど、人間性が見えて素敵だよ」って言ってもらえたんですよ。
――それだけ謎めいた人だったんだ?
【佐香】 いつも淡々として感情を表に出すことがないですからね。でも感動をしていないわけじゃなくて、自分のなかではすっごくはしゃいでいる人と同じくらい嬉しがっているんですよ。なので、曲のなかではそういう想いを等身大のまま、ストレートに伝えていきたいですね。
(文:若松正子)
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