昨年4月に“ひとつになること”をテーマにした1stアルバム『ONE』（プロデュース・小林武史）を発表、真摯なメッセージと豊かなメロディーを併せ持つシンガー・ソングライターとして高い評価を得た大知正紘から、2012年第1弾シングル「君待つ今日」が到着。忘れられない人への未練を肯定的に捉え、「もう何も恐れない」という前向きな気持ちを描いたこの曲は、彼の存在をさらに広く浸透させることになるだろう。
未練は決して悪いことではない
――「君待つ今日」はいつくらいに書いた曲なんですか？
【大知】 原型を作ったのは1年以上前なんですけど、歌詞の書き方自体を変えてみようと思って、かなり手直ししたんですよね。
――曲の書き方に変化があった？
【大知】 はい。昨年の4月にアルバム『ONE』をリリースしたんですが、自分の言いたいことをしっかり詰め込んだ内容だったんですよ。それはそれで意味があることだと思うんですが、今はもっと“リスナーのみなさんは、どういう状況で、どんなふうに聴いてくれるんだろう？”ということを考えるようになりました。自分の言いたいことを歌にするだけではなくて、僕が伝えたいことと、聴いてくれる人たちの受け取り方のブレを少なくしていきたいなって。
――シンガー・ソングライターとしての新たな一歩ですね。「君待つ今日」のテーマは“未練”だとか。
【大知】 はい。僕自身、わりと未練タラタラのタイプなんですよ（笑）。＜ヘッドフォンを押し当てたら 大好きだったあの歌が流れてた＞という歌詞があるんですけど、ある曲を聴いた瞬間に思い出が蘇ってきたり。
――ありますね、そういうこと。
【大知】 でも、それは決して悪いことではないと思うんですよね。未練っていうと、女々しいとかカッコ悪いっていうイメージもあるけど、それだけ誰かのことを思えるのは素晴らしいことだし、その想いをちゃんと相手に届ければいいじゃないかって。
――自分のなかにある想いに向き合って、次の一歩を踏み出すというか…。大知さんがこの曲のなかで届けたかった想いは何ですか？
【大知】 “君”っていう存在に対して、「ありがとう」って言いたい、ということですね。それが出来たときに、僕が僕でいられると思うので。
全力でぶつかったことで見えてきたもの
――今回のシングルには、昨年6月に行われた初のワンマンツアーのライブ音源4曲も収録。初のツアーの手ごたえはどうでした？
【大知】 大知正紘の音楽を聴きに来てくれた人たちを目の前にしたときは、ものすごく緊張したんですよ。でも、全力でぶつかっていくことで、いろんなものが見えてきて。もちろん手ごたえもあったんですけど、“ああいうことも出来た、こういうことも出来た”っていうことにも気づいたんですよね。その経験を活かして、次のワンマンライブではもっと進化した自分を見てもらえるんじゃないかなって。バンドと一緒にライブができるっていうのは、ホントに楽しいことだし。
――バンド経験ってあるんですか？
【大知】 最初はバンドだったんですよ。ELLEGARDENさんのコピーバンドから始まって、その後“これでプロになりたい”ってライブ活動をやるようになって。でも、ある日突然、ほかのメンバーから「俺ら、ビジュアル系がやりたい」って言われて。
――ショックですねえ…。
【大知】 で、そこから1人でやるようになったんです。アコギで弾き語りで路上ライブをやったんですけど、パワーコードでガンガン弾いても、あまり人が止まってくれないんですよね。だから、アコギに合った弾き方とか曲とかを考えていって。
――今の音楽性に繋がった、と。すごく前向きですよね。“この状況のなかで、自分がやれることは何だろう？”って考えて、それを実行したわけだから。
【大知】 カッコ良く言えばそうなりますね（笑）。でも、ただ歌いたかっただけなんですよ。自分がいちばん素直になれて、かつ、人とつながれるツールが“歌”だったので。
（文：森朋之）
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