第57回江戸川乱歩賞受賞作
『完盗オンサイト』玖村まゆみ
『よろずのことに気をつけよ』川瀬七緒
史上初! 女性ダブル受賞。この夏最高のミステリー2本立て!
『よろずのことに気をつけよ』
著者:川瀬七緒
定価:1,575円(税込)
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会話のリズムもテンポよく、先へ先へと興味を繋いでゆく。──内田康夫氏
読者を引き付ける魅力にあふれている。──今野敏氏
被害者は呪い殺されたのか!
変死体のそばで見つかった「呪術符」とは。
殺人と呪いの謎に文化人類学者が挑む!
呪術研究が専門の文化人類学者・仲澤大輔の許へ、砂倉真由という少女が訪ねてくる。彼女の祖父は一ヵ月前に何者かに惨殺されていた。事件後に自宅の縁の下で偶然見つけたという札を彼女は差し出した。札に捺された三人分の血判を見て、本物の呪術符だと仲澤は断言する。真由は驚き、仲澤に事件の真相を暴く手助けを依頼するが──。
はじめまして、川瀬七緒と申します。
いよいよ、江戸川乱歩賞受賞作の「よろずのことに気をつけよ」が単行本になり、興奮のあまり落ち着かない日々を過ごしております。
みなさんは、どこか警告めいた響きのあるタイトルから、どのようなことを連想するでしょうか。私は「よろず……」の文言が入った念仏書を見たとき、構想やテーマやキャラクターが頭の中に溢れてきました。
殺人現場から、古びた呪いの札が見つかるところから物語は始まります。
「呪い」と言うとおどろおどろしい印象ですが、殺意を抱くほどの憎悪から、相手の不幸を願う妬みまで含めれば、決して非日常ではない。むしろ、生活の裏側にぴったりと貼り付いているように思えるんですね。そんな人間の感情の揺れも、作品に入れ込みました。
最後に。私は福島県出身です。作中に登場する農村風景は郷里を思い浮かべながら書きましたが、残念ながら無惨に崩れてしまった場所もあります。本当にちっぽけなことかもしれません。ですが、本作が被災地のみなさんの励ましになれば、と心から思っております。
1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科・デザイン専攻科卒。
服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。デザインのかたわら2007年から小説の創作活動に入り、2010年に第56回江戸川乱歩賞の最終候補に選ばれる。2011年、同賞二度目の応募で本作品がみごと第57回江戸川乱歩賞を受賞。15年ぶりの女性受賞者として、注目を集める。
『完盗オンサイト』
著者:玖村まゆみ
定価:1,575円(税込)
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アイデアは馬鹿馬鹿しく、動機は不条理。特異な才能の出現を感じた。──東野圭吾氏
報酬は1億円。
皇居へ侵入し、徳川家光が愛でたという樹齢550年の名盆栽
「三代将軍」を盗み出せ。
前代未聞の依頼を受けたフリークライマー・水沢浹は、どうする? どうなる?
不気味な依頼者、別れた恋人、人格崩壊しつつある第3の男も加わって、
空前の犯罪計画は、誰もが予測不能の展開に。
最後に浹が繰り出す、掟破りの奇策とは?
みなさま、初めまして。玖村と申します。
第五十七回江戸川乱歩賞をいただき、よろこびを噛みしめつつ、今は次作の準備や取材に追われています。
受賞作「完盗オンサイト」ができあがったのは乱歩賞応募締切りの直前でした。原因は、主人公・浹(とおる)の性格づくりが難航したせいです。「こういう感じかな」と書いてみるものの、肝心なところで「えっ、俺、そんなことできません」とこちらの意図通りには動いてくれず、ぴったりの浹が見つかるまで三ヵ月ほどかかりました。とはいえ、書いている間じゅう、とても楽しく、ふわふわと、どこかべつの世界を旅しているようでした。
先日、仮想空間で登場人物である國生兄弟に会いました。創作中、何度も著者の背中を押してくれたのは実はこの二人でした。そのお礼を言うと、兄の肇(はじめ)「いや、いいんだよ」と照れくさそうに笑っていました。環(たまき)のほうは、また何か手伝えることがあれば、知らせて欲しいと言っていました。もう少し台詞が多くても、だいじょうぶだとも。
負けず嫌いで向こう見ずの浹と、ちょっと変わった國生兄弟に会いに、「完盗オンサイト」をのぞいていただければ幸いです。
1964年、東京都生まれ。中央大学在学中、体育連盟航空部に所属する。同大学商学部卒業後、航空会社にCAとして入社。20代から作家を志し、航空会社退職後、ポルトガル、島根県と居を移しながら創作活動を続ける。現在、神奈川県在住、法律事務所勤務。
2011年、本作品(応募時タイトル「クライミング ハイ」)が初応募で第57回江戸川乱歩賞を受賞。15年ぶりの女性受賞者として、一躍脚光を浴びる。