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いま最も眩しい作家が描く、成長と再生の物語。

水の柩

道尾秀介

誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。

少年は大切な人に何ができるのか。

私たちがあの場所に沈めたものは、いったい何だったのだろう。五十数年前、湖の底に消えた村。少年が知らない、少女の決意と家族の秘密。

表紙

老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、
自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、
誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」
敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。
だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。
大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。

『水の柩』
著者:道尾秀介
定価:1,575円(税込)
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著者コメント

晴れた空から降ってくる不思議な雨に、昔の人は素敵な名前をつけました。天泣と書いて「てんきゅう」と読みます。

物語の冒頭、この天泣が町に降りかかります。主人公である逸夫の暮らす温泉旅館を、そしてもう一人の主人公である敦子の痩せた肩を濡らします。

この冒頭のシーンを書いたあと、僕は取材旅行に出かけました。

小説の舞台となるのは架空の温泉街ですが、モデルは奥秩父です。

取材二日目、驚くべきことが起きました。晴れた空の下、現地の空気を感じたくてあちこち歩き回っていたところ、突然天泣が降ってきたのです。そのとき僕が歩いていたのは、まさに物語の中で逸夫が天泣を見る場所――そして敦子が天泣に身体を濡らす場所である、旅館の裏手の河原でした。

明るい空と川面のあいだで、雨は金色に光っていました。半開きの口でそれ見上げながら僕は、まだタイトルも決まっていないこの小説が、絶対に素晴らしいものになると確信できました。

信じることで、人は実力以上の力を出すことができます。でもそれは自分一人の力ではできません。僕に力を貸してくれたのが何なのか、神様なのか、気圧の具合だったのかわかりませんが、『水の柩』を書き終えたいま、あの確信が現実になったと自信を持って言えます。

いい作品が書けました。

読んでいただければ幸いです。

著者プロフィール

道尾秀介(みちお・しゅうすけ)
1975年生まれ。
2004年に『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。
’07年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞、’09年『カラスの親指』で第62回日本推理作家協会賞(長編部門)、’10年『龍神の雨』で第12回大藪春彦賞、『光媒の花』で第23回山本周五郎賞、’11年『月と蟹』で第144回直木賞を受賞。 驚きに満ちた物語と磨き抜かれた文章で、読者の支持を集めている。『片眼の猿』『ソロモンの犬』『ラットマン』『鬼の跫音』『球体の蛇』『カササギたちの四季』エッセイ集『プロムナード』など著書多数。

担当者コメント
エンターテインメント界の若きトップランナー・道尾秀介さんの最新作が登場です!
初めてこの物語を読んだとき、“生きるためについた嘘”にひたむきに向き合おうとする登場人物たちの姿に、とても勇気づけられました。また、美しい文章で描かれる見たことのない景色の数々には、小説ならではの「読む喜び」が詰まっています。この物語の結末には、今を生きる私たちの「日常」を支え、励ましてくれる力があります。ぜひ多くの方に読んで頂きたい作品です。

  • 自分の過去を変えることや、消すことができなくても、乗り越えることで強くなれることを教えてもらいました。(10代・女性・東京都)
  • やさしく背中をたたいてくれるような、いたわりのにじむ物語。天泣の描写が美しく、きらきらとまぶしかった。(30代・女性・東京都)
  • 最後まで読み終わって、あらためてタイトルを見ると胸が締め付けられます。『水の柩』は、自分の大切な人達にもぜひ読んでもらいたい本です。(20代・男性・茨城県)
  • 誰かを救うことは出来なくても、世界を変えることは出来なくても。それでも日常を生きていく。そんな、力強い救いの物語だと思った。(20代・女性・東京都)
  • 生きるための嘘があり、一筋縄ではいかないほど人生は深い。だからこそ人の笑顔は美しい。そういう事を教えてもらえた本だった。(30代・女性・神奈川県)
  • かつて自分にはできなかったからこそ、何も変えられないと諦めている中高生にも読んでほしい。(20代・女性・埼玉県)
  • 「いじめ」を受けていたことがあります。今となっては、通り過ぎてきた過去の出来事なのですが、その時には苦しんでいました。かつてこの小説に出会っていたなら、弱々しい生き方が変わっていたかもしれません。(40代・男性・愛知県)
  • 後ろ向きになりがちな今の世相のなかで、過去を断ち切って新しいことを始める力が人にはあることを感じる小説。道尾秀介の作品のなかで最も、未来に力を与えてくれる読了感。(30代・男性・東京都)
  • 子どもの時の、泣く寸前の喉の奥が熱くなるような、たまらない気持ちを思い出しました。(30代・女性・東京都)
  • この作品から私が最後に見いだせたのは、間違いなく“希望”という名の光だったように思います。(20代・女性・東京都)
  • ここに癒しも奇跡もないし救世主もいない。だが、「生きていく」ことの過酷さと、ほのかな希望と、勇気や強さに変わる優しさがある。(40代・女性・鹿児島県)
  • 登場人物たちが、沈めてきたもの、沈めたかったもの、いろいろなことが、痛い程伝わってきました。久しぶりに息を詰めて読みました。すごかったです。(文教堂書店 浜松町店 大浪由華子様)
  • 絶望をすくうのは、友情や家族の愛しかない。中学生の主人公たちの、水のように透き通った心の交流に心を打たれました。(MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店 三瓶ひとみ様)
  • どんなに大きな文学賞も、彼にとっては単なる通過点に過ぎないことを実感。ますます純度と輝きを増し、より大きくなってゆく物語世界――いま、いちばん追いかけておくべき作家No1であることを確信する。(三省堂書店 営業本部 内田剛様)
  • 今までに、「死にたい」と思ったことのあるすべての人にとって、この小説は、今生きている自分への最大の贈り物となると思います。(精文館書店 中島新町店 久田かおり様)