1969年のクーデターでその座を追われたリビアの最後の国王の血縁で、王位継承順位第1位とされるモハメド・エル・サヌシ氏(48歳)が20日、ブリュッセルにある欧州議会を訪れた。欧州議会の英国選出保守系議員が招待したもので、イースター休暇中でいつもであれば閑散としている欧州議会の記者会見場は、時ならず満員の劇場のようなすし詰め状態となった。
1988年に英国に亡命し、その後ずっとロンドンに滞在しているサヌス氏は、若々しく細身の健康そうなお金持ちのロンドンッ子といった感じ。亡命後はリビアの反体制派の行事を主宰するなどしており、会見ではどのような体制になろうとも、新生リビアの国造りに参画したいと熱い思いを語った。
「リビア国民が君主制を望もうが共和制を望もうが、わたしは最善を尽くす。反体制派が自由で公正な選挙を実施する手助けをしたい、国民に奉仕するのがわたしの仕事だ」
言い換えれば、これは国民が望めば国王になるとの決意表明だ。リビアは1951年にイタリアから王国として独立したが、リビアの最高指導者カダフィ大佐が69年に君主制を打倒し、サヌシ氏の叔父だった時のイドリース国王を追放した。
予言者モハメッドの末裔(まつえい)と紹介されたサヌシ氏は、北大西洋条約(NATO)加盟国がリビアに地上軍を派遣すべきかどうかとの質問には答えなかったものの、「それが国民の意思のはずだ」と述べた。カダフィ大佐については、「彼は一つの言葉しか分からない。それは力だ」と皮肉った。