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【オピニオン】オバマ再選は難しい、でも共和党は気を抜くな

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 われわれが知ったつもりでいる大統領の政治的立場が、もし、すべて間違っているとしたら…。私が思うに、今週、それが明らかになったのではないか。

イメージ Chad Crowe

 社会一般の見方はこうだ。失業が小幅減少、若干ではあるものの景気は回復に向かい、さまざまな事柄に影響を与える現職大統領としての強み――つまり、2012年、オバマ大統領が勝利する可能性が高い。頭の良い人々、とりわけ共和党はそう考えている。しかし、こう考えてみてはどうだろう。それは真実を表していない。すべて間違いである。バラク・オバマは攻略可能で、それに彼のライバルは気づいてもいない。彼は2012年に負ける見込みが高い。たったひとつだけ、彼を救うものがある。それについては後述する。

 直近の問題から始め、それから重要な点へと移ろう。大統領は、幾つかの負けの季節を送った後、ストレスのたまる、不調な春にどっぷりと浸っている。外交では、リビア政府軍を爆撃するものの、時には反体制派を巻き添えにし、彼らを慌てさせている。国民の保護という責任は、守られない傾向にあるようだ。

 国内政策では、大統領のライバルは、歳出と債務という今日の重大な問題で優位に立ち、今週の大統領の演説後もその優位性を維持した。先週の予算をめぐる対立では、大統領は、下院共和党に打ち負かされるとともに、財政問題の解決に真剣で内容のある独自のアプローチを示したポール・ライアン米下院予算委員長(共和)によって、決定的な差をつけられた。

 今週の世論調査の結果はこうだ。イプソスの調査では、米国が間違った方向に向かっているとの回答が69%と、3月と比べ5ポイント上昇した。ゾグビーの調査では、オバマ大統領の再選を支持する回答は38%にとどまり、新たな候補を望むとの回答は55%にのぼった。オバマ大統領は、2008年の大統領選でペンシルベニア州を大差で制したが、今週同州で行われた世論調査の支持率は42%、不支持率は52%となった。ギャラップ調査では、黒人とヒスパニック系の有権者の支持率が低下。特にヒスパニックの支持率は54%と、就任当時の73%を大きく下回っている。白人の支持率も、就任式時点での60%から39%に低下している。

 われわれは、こうした世論調査の全般的な傾向を伝えることに慣れ、重要なことを忘れている。それは、人々が彼の指導力を経験すれば経験するほど、気持ちが彼から離れていくということだ。数字の方向が多少変化したとしても、これが大きく変わるとは思えない。別の言い方をすれば、大統領に追い風となったかもしれない数字の上昇はあったものの、今のところプラスに働いていない、ということだ

 人々は今、オバマ大統領の個人的な支持率について言う。大統領個人に対する支持率は一貫して、指導力に関する支持率よりも高い。リアルクリアポリティックスの平均でみると、彼の個人的な支持率は47.6%と悪くはない。

 しかし、過去1年半、あらゆる階層や地域の人々と交わした会話に基づいて、直感を言わせてもらおう。大統領の個人的な数字は、世論調査の結果よりも低い。世論調査が間違っているのではない。オバマ大統領を好きではない、と言うことを、国民がためらっているのだ。国民は、興奮と希望を持って2年前に950万票の大差で選んだ人物を、好かない、と若い世論調査員に言いたくはない。過去1年で全く耳にしなかった発言が2つある。それは、「オバマが好きだ」と「ジョン・マケインが大統領だったらすべてうまくいくのに」だ。

 オバマ大統領の指導力を支持しないと調査員に言った後で、後ろめたさから、オバマ氏個人は評価すると言う人々が相当数、存在するのではなかろうか。(もちろん疑念にすぎないのだが)

 われわれは皆、日々に埋没し、重要なこと、つまり、オバマ大統領が就任数年で悪い印象を作り、それを払しょくできていないという重要な事実を忘れている。

 彼は最初の1年2カ月を、国民が重要視する景気の悪化、雇用、歳出についてではなく、自らが重要だと考える医療保険改革を進めることに費やした。彼は、国民と同じことを考えなかったようだ。このことは、大統領が、国民の危機に対応していないことを浮き彫りにした。これを見過ごすことは難しい。

 今週の大統領のスピーチは、不完全な指導力の寄せ集めだった。それは、時として巧妙だが、単に巧妙なだけで、時宜を得たものではなかった。危機を前にした巧妙さというものは、無礼でさえある。スピーチは、最近の歴史を無視したもので、まるで、大統領が誰も気づいていない歳出問題を発見し、その危険性について警鐘を鳴らすことを決意したかのようだった。大統領は、他の政治家が「無駄と濫用」に着目した削減を行おうとしているが、真の問題が給付金制度の支出であると知っているのは自分だと言った。しかし、給付金制度の取り組みについては、歳出問題に真剣に取り組む者であれば誰もが言及してきた。そう、ライアン下院予算委員長のプランとは、まさにこのことなのだ。

 このスピーチは、知的に支離滅裂だった。2年間、基本的に支出を是としてきた政権が、突如、高水準の支出は破滅だと主張している。大統領は超党派の努力を呼びかけたが、その姿勢とアプローチでは、彼の要請は絶対命令としか聞こえない。対立から超越しようと試みても、それは何のリスクも取ろうとしない、よそよそしい大統領にみせるだけだ。

 最も重要なのは、ホワイトハウスが歳出の問題を党利党略や選挙のための手段と捉え、本物の危機と捉えていないことが、このスピーチからうかがえることだ。これは、危機感を募らせている国民に対して失礼である。

 こうした欠陥のせいで、このスピーチは、影響力を持たないだろう。影響力のない大演説は、行われなかったも同然だ。

 共和党と同程度の票数を読み、同じような政策を選んだ民主党の選挙専門家は、さぞやがっくりとうなだれていると思うだろうが、そうではない。彼らには望みがある。それは、共和党が、序盤の党員集会・予備選で調子に乗ることだ。

 彼らは、一風変わった、極端な、大統領にそぐわないような人物が共和党の大統領候補に指名されることに期待をかけている。彼らは、共和党の有権者が、文化的に不興を感じて、またはエリート蔑視の行動から、あるいは主流メディアを翻弄するため、「他のみんな」が受け入れられない候補者に投票すればよいと思っている。ここで「他のみんな」とは、もちろん、大統領選の行方を決める重要な「中道」を意味する。民主党の望みとは、この「中道」が共和党の候補者を見たうえで、すでに知っているオバマ大統領をしぶしぶ認めることだ。

 最近の共和党の大統領選予備選では、1996年のボブ・ドール氏、2000年のジョージ・W・ブッシュ氏、2008年のジョン・マケイン氏など、穏健派と思われる候補が選ばれる傾向にある。しかし、今年は、かなり風変りな候補が見受けられる。

 来たる選挙年の焦点は、「オバマ陣営は再び盛り返すのか」でも「民主党は、共和党を上回る額の選挙資金を集め、使うのか」でもない。「共和党は本気なのか」である。共和党には、歴史と伝統に恥じない「現在」に対応する力があるのか、である。もしそうなら、そしてもし、この国に語りかけ、真剣な経験と実績を持ち、地道で信頼できる候補者を立てることができるなら、共和党は中道派の支持を得る。そうすれば、共和党は、党が求める大改革にとって不可欠なもの、すなわち大統領の職を勝ち取れるだろう。

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