スタンダード&プアーズ(S&P)が18日朝、米国債の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたが、それを受けた米国債利回りは低下した。
シカゴオプション取引所(CBOE)の30年債利回りは前週末比14ベーシスポイント(bp)、10年債利回りは39bpそれぞれ下落。
通常、格下げ以外の条件が同じであれば、投資家はデフォルトリスク高まりの見返りとしてより高い金利を要求するはずである。そのため、今回の一連の動きは大きなサプライズであった。
格付け会社による将来的な米国債格下げを見込み、2年以上前から利回り上昇を予想してきたパッドシステムリポートのダン・シーバー氏は、市場の反応に不満を抱いたと言う。しかし、18日夕に行ったインタビューでは、同氏は持論に変更はないと話した。
サンディエゴ州立大学ファイナンス学科の客員教授でもあるシーバー氏は、S&Pの格付け見通し引き下げがワシントンの両政党にショックを与え、財政規律強化の原動力になることで、長期的に米国の財政赤字削減に繋がるという期待が債券市場の不可思議な動きを引き起こしたのではないかという一部の見解を、あまり信用していないと述べた。
その推測を信じるなら、さらにいい説がある、とシーバー氏は笑う。
同氏によれば、国債利回り低下の理由として可能性がより高いのは、米国債の格付け見通し引き下げを受けて、投資家が他国の債券-特に欧州-の格下げを懸念したということである。言い換えれば、米財政赤字も膨らんでいるが、それ以上に財政が悪化している国が他にあるということだ。
全てのものは比較対象で変わる、とも言える。
ではなぜ危機感を覚えた債券投資家は、米国以外に資産を移行しなかったのか。結局のところ、米国債の格付けを上回る債券は16カ国に存在する。それらが流通する市場は、高格付債券の世界需要を吸収するだけの規模や流動性がないというのがシーバー氏の答えだ。
そのため皮肉なことに、米国債が実際に格下げされれば、安全な逃避先として需要がさらに膨らむことになる。
米国債利回りが上昇するというシーバー氏の予想が的中するには、投資家が債務不履行リスクの高まりの対価として要求する利回り上昇の圧力が、安全逃避先としての利回り低下の圧力を今後上回らないといけない。
すでに2年待ち続けたシーバー氏は、忍耐が必要と話す。同氏は現在の状況が、数年損失を出しながらもインターネット関連株を避け続けた1990年代後半、そして、重力にさからうように急騰する住宅関連株をショートし続けた2006年から2007年に通じるものがあると言う。
もちろんどちらの場合も、シーバー氏の忍耐は結局報われた。同氏は今回も同様の結末を期待している。
(執筆者のマーク・ハルバート氏は、バージニア州のハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストの創設者。1980年以降、160以上の金融ニューズレターの助言の追跡調査を実施している)