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今回「世界ふしぎ発見！」の舞台は、エジプト。世界で最も人気の観光地であり、番組でもお馴染みの国です。ピラミッドを代表とする古代エジプトの遺跡は多くの人を魅了し、感動を与えています。しかしエジプトに憧れたのは現代の人だけではありません。1800年代にはすでにエジプトのパックツアーがあったというのです。しかも参加者には、未婚の良家の子女、今で言う‘おひとりさま’がいました。まだ「女性は家にいるもの」という考え方が根強い時代に、彼女たちはどんな旅をしたのでしょうか？ミステリーハンターの山口日記さんにお話を伺いました。

初めてエジプトを訪れて

エジプトは行ってみたい憧れの国でした。でも自分が行くとしたら、30代くらいかなぁと思いながら、エジプトの写真集を眺めていました。アジアの国は、わりと気軽に行けるので、よく行くのですが、エジプトは移動時間もかかりますし、費用も(笑)。ですから今回の取材で行けることになり、本当に嬉しかったです。実際に行ってみて、まず驚いたことは、暑さです(笑)。50度近くあった所もあったと思います。そこまで暑いと、口で呼吸すると喉がヒリヒリしてくるんですね。体に張る保冷シートも、フィルムを剥がすやいなやカピカピに乾燥してしまうし、ウェットティッシュも瞬く間にドライティッシュになってしまいました。常に汗は出ているんですけど、乾くのが早過ぎて汗をかいている実感はないんです。逆に皮膚は乾燥していて、ガサガサ。アジアの蒸し暑さとは違う感覚なので、もう訳がわからない状態でした。暑さにも、ここまで過酷なレベルがあるのだと知りました。

―食事などはどうでしたか？

食事はもうハンパなくおいしかったです！香辛料が強くて日本人に合わないという話も聞いたことがありましたが、私はそうは感じなかったです。エジプトの味付けに使う香辛料を買って帰りたいと思ったくらいです。とくに気に入った料理は、タジンですね。トマトスープで、野菜や肉、魚介などを煮込んだものです。白いご飯にかけていただきます。このタジンは、どこのお店で食べてもおいしかったです。ですから人生初の驚異的な暑さのなかでも、食欲が低下しないでしっかり食べることができました。パンにつけて食べるマメやナスのペーストもおいしかったですね。食べ過ぎてメインが来る前にお腹がいっぱいになってしまったこともありました。エジプト料理のおかげで、元気に取材を終えることができたと思っています！

日記さんが扮した‘クックレディ’とは？

簡単に言うと1800年代のお嬢様ですね。そして資料によると30代で未婚の女性だったそうです。当時良家子女で30代未婚の女性は、外で働くこともできないし、かといって家事をするわけでもなく、パワーを発揮する場があまりなかったのだと思います。ですから未知のものに対する憧れや好奇心が強くなるのもわかりますよね。そこに注目したのが、世界初のエジプト・パックツアーを企画したイギリスの実業家クックです。彼は自分の経営する旅行代理店で、女性一人が参加しても安全で安心ということを宣伝して参加者を集めたのです。そしてツアーに参加した女性のことを当時の人たちが'クックレディ'と呼んだそうです。想像するに、皮肉や軽蔑のこもった呼び名でもあったと思います。今の感覚で考えると、彼女たちがちょっと気の毒にも思えます。でも今回のロケで彼女たちの旅を追体験して、気の毒どころか羨ましかったくらいです。1800年代、世界のどの国の人だって海外旅行に行ける人は、ごくわずか。普通の人ではほとんどいなかったと言っていいと思います。そんな時代に、あのすばらしいエジプトの古代遺跡を見ることができたのですから、今の人の何十倍もの感動があったと思います。それに、彼女たちのツアーを体験してみると、彼女たちがいかにパワフルだったか身をもって実感しました。女性がパワフルだということは、今や当たり前のように言われていますが、いえいえ、当時の女性の方が今の女性より体力も根性も遥かに上回りますと言いたいですね(笑)。