Hatena::Diary

novtan別館 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-02-11

円盤になった時点でコンテンツとメディアは分離した

著作権なんて、所詮はメディアからのダイレクト再生が可能な、静止画のみを用いたコンテンツだから可能だった、ということなんじゃないかな。

そもそも「円盤」と中のコンテンツ(この場合データということになる)を明確に切り分けられるようになったのは、パソコンとインターネットと携帯電話が個人レベルで普及するようになったここ十数年くらいの出来事である。

コンテンツはいかにして円盤からはがされたのか? - ビジネスから1000000光年

未だに、小説等はその優秀な再生装置である書籍形態として受け入れられている。一方で、音楽は録音技術の登場時から、再生装置を伴わない形でコンテンツとしての体裁が作られた。もちろん、コストを考えると当然なんだけど。例外というと、オルゴールの類のものか。

それ以前には楽譜というものも音楽のコンテンツそのものとしてあったけど、これを再生する行為は技術を要する。言葉を読む技術よりはだいぶ高度な。そして、再生技術によって味わいが違ってしまう(といっても、小説なんかも実際には読み取り能力の差はあるのだろうけれども)。

だから、レコード、CDの類は、コンテンツの再生の記録、なのかもしれない。われわれはそいつをさらに再生して聞いているんだ。ちょっと言いすぎかな。編集などの行為はコンテンツの再構築でもあるから、再生そのものの記録ではないし。そもそも、コンテンツ自体は「再生」ではないかもしれないけど。

本という再生装置も含んだメディアが優秀だったことで、メディアが著作権を持つという誤解が生まれたのかもしれない。ただ、こうやってウェブ上に出回る文章だってコンテンツなわけで、また、用途によっては書籍よりも電子データのほうがありがたいこともある。となると、文字を操る芸術だからといって書籍である必然性はない。それでも、再生手段とパッケージが分離している、音声・映像コンテンツと比べると、問題が少ない。

もしかしたら、ダイレクト再生可能なパッケージの形態ができたらメディアとコンテンツが再び一体化することが出来るのかもしれない。でも、メディア側の駆動力ゼロで人間が読み取れるコンテンツって静止画しかないんだよね、今のところ。

2009-02-10

消えてしまうことを願うこと

病気が悪化しますように、とかは仮病認定で言っているのかもしれないし、そうだとしたら自分は応答しない、応答が遅れることに対して一生言い訳はしないという宣言なんだろうけれども、もし、仮病じゃなくて本当に消えて欲しいと思っているなら…

都合のいい話だよなあ。自分の気に触るものが消えてなくなるよう願うというのは。死を願うというのは強い呪詛だと思うけれども、そんなカジュアルにするものではないのでは、と思う。正義だと思うのなら自ら手を下せばいい。ただ、消えることを願うのは。あるいは懲罰を望むのは。病気に託して。

僕自身のこととして考えると、論争相手に呪いの言葉を吐くようになったらもうダメかなあ。

2億円の見積もりされたのを820万でできたのはすばらしいと思う

が、過大評価はしない。

IP電話を導入する場合のベンダーの見積もりは約2億円だった。アナログ交換機を更新する場合でも費用は約2000万円。しかし自分たちで敷設することでサーバーは20万円,電話機500台は800万円で導入でき,電話料金も年間400万円削減できた」---秋田県大館市産業部商工課商業労政係主事の中村芳樹氏は,IP電話導入の経緯と効果をこう振り返る。

見積もり2億円のIP電話を820万円で構築した秋田県大館市から学べること:ITpro

詳細に要件が見えている状態で2億円提示されたらまあそのベンダーは切ってもよい。逆に、適当にこういうことがしたいんですけどー的なノリで見積もらせたのであれば極大に金がかかるシチュエーションを想定して「最大このくらい」で見積もるだろうから、お役所と思って足元を見る(お役所は緊急時のために無駄を積まなければならない存在ではあるから)状況とは言え、2億円があながち的外れではない。高い信頼性を要求したら例えば(こっち系は弱いので大変適当な数字ですが)

  • 要件調査…SE2名で1月(300〜400万)
  • 要件定義作成(SEコスト400万)、什器(電話500台×2万+サーバ100万+ルータやら交換機やらで200万)
  • 敷設と設定と運用監視開発で5人1月800万くらい?
  • 教育・引継で2〜300万

とか積んでいくと3000万。どのスペックでどこまでやるか、というのははっきりいって要件しだいなので、これが2億になることはないことではありませんね。例えば、一台でも故障したらすぐに交換するとか、サーバーは常に二系構成+バックアップスタンバイとか、監査証跡のための機能とか、設定するための権限管理とか、保守コストとか、常駐SEとか、定期的なセキュリティーチェックとか、まだまだ積めるものはたくさんあります。

とはいえ、最低限でよいし、リスクは自分で被る、だったら相場に比べたらかなり安く出来るのも確かです。不確実な部分に対応するコストというのは大変に高いものであり。

あと、各所で指摘されていますけれども、この記事にある一つの問題は、人件費。ベンダーの見積もりには技術料としての人件費はかかっているから、いくら本業とは別でやったとしても、残業代が発生しているはずの公務員の人件費を無視してはいけないし、教育とか引継ぎとか保守を自分たちでやるのであれば、それもコストとして算入しなければなりません。いや、暇だからいいんだってなら別ですよww人員削減しろよって話ですが。

什器にしても、組み合わせとか実績の部分でリスクを負えないベンダーは高くなるのは仕方がない。責任は全部負うからとにかく安く、という提案依頼であれば、瑕疵担保責任一切なしで、故障の保証も(初期不良や設計ミス以外)一切なしで、という契約であれば、同等の提案(ただし人件費分高い)が出来るかもしれません。もちろん、人件費はプロフェッショナルサービスですから公務員の自給よりはだいぶ高いはずだけど。

よく業界の人は、「1000万?高すぎるなあ。個人的に頼まれたら100万でやってあげるのになあ」というようなことを言いますよね。これは真実100万でできることもあります。ただ、残りの900万が何に対してお金を払っているか、ということを無視してはいけない。「この程度の要件なら、自作サーバ1台とフリーのアレとアレを組み合わせて…」という程度のものが出来れば本当にいいのか。何か問題が起きても保守してもらえなかったりするとかえって困ることもあります。今いろんな会社で起きている「Excel業務システム(担当者退職済)」問題なんかもそれに類するものです。エンドユーザーがシステムを作れる、というのは人に依存してしまう可能性はかなり高い。教育するっていったって、ITの専門家として雇っているわけではない以上、みんなに適性があるわけでもないしね。そのあたりはちょっと心配です。

あと

つまりプロでもアマチュアでも,同じ情報にアクセスするこが可能だ。大館市の中村氏も普通科高校出身で,コンピュータの専門教育を受けたわけではない。意欲さえあれば,プロに劣らないスキルを身につけることができる環境が生まれているのではないか。

見積もり2億円のIP電話を820万円で構築した秋田県大館市から学べること:ITpro

これはちょっとね。ベンダーの人間だって結構な人数そうなんだから、これを言ってしまうのは「お役所の仕事はITスキルを身につけシステムを構築すること」と言っているのと大差ない。それはちょっと違うよね。本業をちゃんとしなさいとは思う。

ただ、こういうことが出来る人が要る、というのはベンダーやシステムの評価をちゃんとできるし、要件の取捨選択もできるということで、ユーザーとしては理想的な状態であることは間違いない。お役所ということで、地場産業としてのITベンダーを育てる力になれるかもしれない。そういう点で、こういったケースをよいお手本にして欲しいとは思う。

この話は、個人的にはよい話だと思う。これはつまり、「要件」とは、「必要」である、ということをよく認識できる話だ。「念のため」で肥大化する無駄なシステムは山ほどある。とはいえ、「念のため」が要件になってきているのが最近の傾向でもある。それは業務システムとしてというよりはITによる企業統制として。J-SOX対応とか、個人情報保護法対応とか、そういうもの。

そのあたりのバランスを取って顧客のニーズにマッチしたシステムを作っていくことがSIerやベンダーの使命です。だから、銀行のシステムが高額になるのが仕方がない(とは言え、中にいる僕の目からしても高すぎると思うが)のと同様に、きちんと要件が絞られたシステムが安くなるのも当然でなければならないのです。

悲しいかな、客の厳しい目線に晒されすぎたベンダーはリスクを避ける方向にひた走る傾向はあります。さらにぶっちゃけると、技術力が実はそれほど高くないところに原因があるんだけど。この市職員より技術力の低いベンダー社員なんて山盛りいるだろう。でも、集団としての実力は、当たり前だけど市役所よりは高いわけだ。専門家だからね。なんだか悲しい比較だけど…

最後にもう一つだけ。ベンダーに頼むということは、ベンダーが仕事をするということです。仕事をするというのは什器をマージンを取らずに買ってきて敷設してくれるということではありません。適正な利益(これは市職員が自分で出来る程度のことだから安いというわけでは必ずしもありません)を取ること自体は商行為として当然のことです。その点はぼったくりではないということだけはわかってもらいたいものです。

2009-02-09

なんで中傷タグの問題が「第三次トリアージ論争」なんだ?

ものの名前に敏感な人たちが、もはや引き合いに出されるべきではない、直接の話題ではない「トリアージ」を個人的闘争のための論争タイトルにするわけないじゃないか。

そう、「表現の自由」には責任が伴う

実に正論でわたくし感服いたしました。

全く身に覚えのないことを言いふらされ、非難されたら、どれほど嫌な気分だろう。

インターネット上で他人を中傷する行為は、「表現の自由」をはき違えた卑劣な犯罪だ。

ネット暴力 「表現の自由」には責任が伴う : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

あれ?いきなりタイトルと合致していない内容が…いや、間違ってはいないんだけど、なんで範囲が「インターネット上」に狭まっているんだろうか。

てっきり、今まで新聞本誌が冤罪被害者を犯罪者かのように扱い中傷したり、関連会社の週刊誌等があることないことを、書きたてていたことに対して、今回の「炎上逮捕」事件をきっかけに反省し、自省の念を述べているのかと思ったんだけど…。

憲法で保障された「表現の自由」は、健全な社会を守るためにある。匿名に身を隠したネット上での言葉の暴力とは、無関係だ。

ネットへの書き込みをめぐっては、自分のホームページに不確かな情報を掲載し、飲食店経営会社を中傷したとして、名誉棄損罪に問われた男性被告が、東京高裁で先月末、逆転有罪となった。

ネット暴力 「表現の自由」には責任が伴う : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

マスコミは健全な社会を守るために会社という傘の下での匿名で罪もない人を告発することは許されるけど、ネットユーザーはそんな権限がないからやってはならないということですね。わかります。

事件報道なんかでよく嘯かれる「犯罪については国民が知りたがっている。報道規制は表現の自由を犯している!」というマスコミの立派なご意見とか、特権を持っている方はすばらしいですよね。

えーと、マスコミもいわれのない中傷をした場合は警告もなしにいきなり記事を書いた本人が名誉毀損で刑事事件の容疑者として扱われるべきだよね。社会正義があれば許されるというほど高尚なことばかりやっているわけじゃないよね。

よくさ、報道の人は自分を特別視してこういうことを語りがちなんだ。僕が某ラジオ局でバイトしていたとき、局の収入面ではあまり貢献していない報道の部署の人がひときわ偉そうで、プライドが高かったように思う。俺こそが「マスコミだ」的な。

もちろん、報道も立派な仕事だと思うし、社会に対する使命は大きい。だからといって、自社やグループ会社、マスコミ全体が、ここで槍玉に上げられているような行為を今までずっとしてきたことを無視して(どころか時に擁護して)、業界ではない「インターネット」が行ったことだけを悪だと論じることは卑怯だ。

まあこれは表現の自由をはきちがえません、という読売新聞グループの自戒としての宣言だと思っておくことにする。

2009-02-08

罵倒と罵倒芸

は、違うらしい。どう違うのかな。

罵倒は言葉の選択において文脈を持たない、という感じかなあ。たとえば、まったくロジカルでないことに対して「頭が悪い」というのと、自分の意見に与さないことを「頭が悪い」というのは大違いだし。

もっとも、後者の場合、自分の意見が理解されないことをもって相手が非ロジカルであることと認定している可能性はある。そういう場合も、議論の外側から見て、言うほどロジックにかけているわけではない場合は「無駄に罵倒しているなあ」と思うことはある。

意見の対立でののしりあうことはリアルでもよくあること。「こんなこともわからないなんてお前はバカか」とか。でもまあそういうことがあったからと言って、飲み会のたびに「あいつはバカだ」と違う人に言いまくっていたらうざい人だろうなあ。「あいつ」が「社長」で他の会社の人に聞かれてて後で問題になったりして。

まあ、なんというか。観客というのは無責任なものだから、観客向けのアピールとして罵倒を行うというのはそれなりにリスキーな行為なんだ。

スーパープログラマーは生産性がスーパーなわけではない

スーパーコーダーならともかく。でもそれってツールを使いこなす技量と大差ない。

ということを上げているんだけど、なんでこれが理由になるのか分からない。「スーパープログラマーでもいつも生産性が高いとは限らない」ことの理由としてならわかるけど、体制が変わらない/変えられないことの理由としてはさっぱり分からない。誰か解説して。

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

ようはあなたが望む体制はスーパープログラマーに選ばれないってことじゃないの?僕はスーパーじゃないからわからないけど。

もとのエントリは単に「個人の能力差はとても大きいのにそれを無視して属人性をなくそうとするのは間違ってる」というだけの話。

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

という話が間違っていると思うからみんな反応するんだと思うよ。

そもそもの前提として、業界は今現存する(あるいは将来生まれる)スーパープログラマーで全ての需要が満たされるというものが成立しないと、属人性を排除して均質化および全体の質の向上を図るという戦略が間違っているとはいえないから。

なんだろう、コンプレックスでもあるんかな。

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

僕はともかくdankogaiにそれいっちゃいかんだろwww

これとかそうだよね。もとの趣旨を外してコーディングだけに限定している。個人能力差が大きいことや属人性のことは、別にコーディングに限った話じゃないことぐらいわかるだろうに。

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

それは捉え方が間違っている。業務要件だってテストだって、個人能力によって効率は違う。でもそんなの誤差だというぐらいの物量の前でこちらに人数がいなくてどうするんだって話。小規模プロジェクトしか経験ないのかなあ。

こういう人ほどプロジェクトに人員を投入したがるんだろうなあ。『搾り出す』とか、なんでそんな言葉を選ぶかね。普通に、生産性の高い人の能力を引き出す、でいいじゃん

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

オリンピック選手のたとえをするというのは極端な例だったんだろうけど、その話をした以上はスーパープログラマーのレベルを世界を争うレベルと規定しているという前提だと思って当然です。で、搾り出すと引き出すを言い換えたところでやろうとしていること変わるの?単なるサポートなら普通大きいプロジェクトはPMはじめとした管理専門体制がひかれているし、会社の雑務は管理部門とか営業にお願いしたりするよね。特別チーム北島を作らなきゃいかんようなプロジェクトがあるんかねえ。

非現実的な提案に見えるのは、そういうところ。雑務に煩わされない程度なら今でも十分実現可能だし、実現されている。

月70万の人材より月140万の人材が4倍5倍の生産性を出すような世界で、何言ってるんだか意味不明ですよ。

Re: 従来のソフトウェアエンジニア人事工学が決定的に間違っている点 - kwatchの日記

30倍からだいぶ縮まりましたな。で、その生産性ってどういうもの?コードの量?コードの質?それとも…なんだろう。

昔話

一昔前の、たとえばインターネットバンキングの話をすると、突貫工事、毎日バグ対応リリース当たり前、作業手順もへったくれもなく、ただただ個人スキル(パイオニア的な人たちの集まりでかなり高い)に依存した、昼も夜も現場で生活しています状態のプロジェクトでかなり物理量的な生産性も高いし新しい仕掛けが日々生まれていったのだけど、当然穴は沢山ありました。一時期猛威を振るったoffice氏の、ほとんど実効力のないセキュリティーホールの指摘に鷹揚に対応していたり。

僕がこの業界に入ったころはそういう風潮の最後期。当時のプロジェクトは本当にスピード感があった。工数も今考えるとありえないほど安い。出来る人がそれなりに集まって、それなりの設計をしていなかったら終わっていただろう。もちろん、全部が全部そういうチームばかりではなく、毎日のように起きるバグに泣かされているところもあった。でも、生産性のいいチームが楽勝だったかというと、もともとぎりぎりなわけで。つらいチームが死ぬほどつらいだけだった。

その後どうなったかというと、ネットバンキングはもはや試行サービスではなく、ATMと同様の重大なインフラであり、金融監督庁に監督されている。重大な障害が起きると呼び出され、立ち入り検査され、頭取が怒られ、誰かの首が飛ぶ。テストの工数も、リリースの手順も、必要な期間も、飛躍的に増大した。特にテスト工数はもはや全体の工数の80%を占めるといってよい。膨大なエビデンスを検証した証を残しておかないと障害が起きたときに体制の不備を指摘され、全コード見直しだとかそういう指示を食らうことになる。

その中で、スーパープログラマーの出来ることは少しでも質のよいコードを、それをうまく使う手順とともに、スーパーじゃない人のために提供することだ。そして、そのことによって全体のコードの均質化を図ることが、ソフトウェア工学が目指すものの一つだろう。

引き合いに出すのもなんだけど、はてなくらいの不具合発生レベルでインターネットバンキング作ったら銀行潰れる。

出来る人の存在によって、軽減されるのは、量ではなく質。もちろん、すばらしい設計によってコードの量が減ることはある。けれども、10個の分岐が共通ロジックに収められようが、ITのケースは変わらない。UT<ITの状態では、無理に共通化したロジックの変更により障害対応のテスト工数が跳ね上がることもある。

僕の体験として。

当初800人月くらいの見積もりを、機能を削ったといえ500人月くらいでやったのはたいしたものだと思う。多分、スーパーほどじゃなくても、平均的な人よりかなり生産性…ではなく、設計力のあるプログラマーがリーダーを張っていたと思う。そういうプロジェクトも経験したうえで、スーパープログラマー雇えば、すごい工数減るじゃんと思う人はあんまりいないと思う。

ひどいブックマークコメントの話

節度というか、態度の問題なんだと思うんだが。

正直、罵倒タグとか、罵倒コメントとかをつける人が社会の不正義に非寛容なのはどうにも釈然としない。自らの正義のためなら敵から見て悪者になるのも厭わないというのはかっこよさげですが、他の人の客観からですらどう見ても単なる悪者です、となりがち。

暴力を選択する、というのは単に説得を試みるより現実的な手段ではある。それによって成し遂げられるものなどろくなものではないのだが。

2009-02-07

ニコニコ動画でアンケートした結果を持って調査と称するおかしみ

ギャグでやっているような気がしてきてしまいます。

権利者側は2008年12月に、ニワンゴの動画投稿サイト「ニコニコ動画」にあるアンケート機能「ニコ割アンケート」を用い、補償金制度に関する調査を実施。これによると、私的録音に用いる機器はパソコンが72.4%と多く、これを基に試算すると「11〜39歳の個人がパソコンに保有している楽曲は239 億曲を超える」(日本音楽著作権協会の菅原瑞夫常務理事)など、パソコンによる私的録音録画の実態が広がっているとする。

「20XX年モデルには乗らない、パソコンにも補償金を」:ニュース

239億曲というのはにわかには信じがたいですね。総務省の統計によると、10〜29歳の人口が大体2700万くらい。つーことは、1人頭1000曲。アルバムに換算すると100〜150枚くらい?1枚2500円として、25万円×2700万=6兆円以上?私的録音のせいで売り上げが落ちたと仮定して、10年前と同じ売り上げが続いた場合との比較をしても大体1〜2兆円くらいしか差分がないので、239億曲の3分の2は少なくとも正規に購入されたものと考えてもよさそう。しかし、パソコンに保有すること自体は何にも悪くないだろうしねえ。

じゃあ、アンケートも見てみようか。

2008/12/19 特別アンケート「私的録音実態調査」

選択肢が多くて長いのでそちらはリンク先で。

Q1. あなたは、保存用に音声や音楽をデジタル録音する際に、どのメディアを主に利用しますか。(音楽ファイルのダウンロードを録音に含みます)

なんだこりゃ。いきなり音楽ファイルのダウンロードを含みますと。区別はしない、使ったら全部音楽ファイルのダウンロードと同じ(しかもダウンロードって違法も合法も区別されない)。これはひどい

Q4. この1年間で、およそ何曲録音しましたか。(音楽ファイルのダウンロードを録音に含みます)

これもひどい。

Q14. 録音にパソコンを利用する方にお聞きします。最近1年間に録音した曲のなかで、有料でダウンロードしたのは何割程度ですか。

選択肢に「ダウンロードはしていない」がない。

Q16.パソコンで録音したり保存したりした音楽を、さらに下記の機器・媒体にコピーしますか。

iPodに入れるためにiTuneに入れたものは全部該当する。当たり前に使うのと、違法にダウンロードしたのをさらに入れるのとの区別がつかない。

次録画。

2008/12/20 特別アンケート「私的録画実態調査」

Q1. あなたが主に利用するデジタル録画機器を教えてください。(映像ファイルのダウンロード保存を録画に含みます)

録画機器とは再生機器を含むのかどうか。携帯HDD式プレイヤーは録画機器ではないのか。いまいちわからない設問

Q4. 最近1年間、主にどのような映像コンテンツをデジタル録画しましたか。(映像ファイルのダウンロード保存を録画に含みます)

無料でダウンロードできるものに違法とそうでないものの区別がつけられる選択肢がない。

最後に補償金

2008/12/21 特別アンケート「私的録音録画補償金について」

Q1. デジタル方式で行う私的録音録画には、著作者やアーティスト、レコード製作者等(以下「クリエータ等」)への補償金の支払が必要であることを知っていますか

設問が嘘八百。

私的使用を目的として、「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるもの」により、「当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるもの」に録音又は録画を行う場合(著作権法30条2項)

私的録音録画補償金制度 - Wikipedia

であり、たとえば今話題のブルーレイは対象ではない。

Q6. ヨーロッパでは、多くの国で携帯音楽プレーヤーや、データ用CD-R・DVD-Rなどが補償金の支払対象となっていることをご存知でしたか。

ヨーロッパではDRMと補償金、どっちがよいんだという論調が主流であり、どっちもとろうという流れではないようだが、そのあたりを説明しないと片手落ち。

Q7. 日本では補償金制度に反対しているメーカーが、ヨーロッパでこれら機器等を販売する際、補償金を支払っていることをご存じでしたか。

意味のない設問。単なる法律遵守。

Q8.こうした事実により、例えば、フランスでは国民一人あたりの年間の補償金負担額は400円ほどですが、日本では28円ほどです(2007年度)。国によってクリエータ等に還元される補償金の額に大きな違いがあることをご存じでしたか。

前段の前提が意味を成していないため、この設問にもたいした意味はない。

Q9. また、補償金制度のある国々では、日本以外すべて、法律上の補償金支払い義務者がメーカーや輸入業者であることをご存知でしたか。

だからなんだというんだwww

Q10. 著作権保護技術(コピーガード)は、コピーが簡単なデジタルの世界では、違法な利用を防止する重要な役割があると、クリエータ等は考えています。あなたは、コピーガードについてどのようにお考えですか。

考えているというクリエータ等が何者で内訳はなんなんだろうか。

Q13. MDではこの著作権保護技術が有効でしたが、パソコン上では事実上無効となり、デジタルによる私的録音がクリエータ等の想像をはるかに超える量になってしまったことが、現在の補償金制度を見直す動きの大きな要因であることをご存知でしたか。

存じ上げないのですが、本当にそうなのでしょうか。自分の買ったCDから携帯用のMDにコピーするのにもメディアに補償金がかかっているのに違和感があったくらいなのですが。

全部に突っ込んでいたらきりがないのですが、特にはじめのほうには違法と合法の区別がつかないような選択肢が並んでたりしてなんともばかばかしい。アンケートというのは選択肢にバイアスがかかっている時点で評価に値しないものです。

さて、何度も書いてきた話ですが、パソコンやHDDへの課金。いろいろと思うところはありますが、汎用機器に課金するのはあまりにも広げすぎ。自分の演奏を取ったりするMDの課金すら金返せと思ったものです。

HDDに課金するスキームでどうこう言っている暇があったら、デジタルメディア時代でもちゃんとコンテンツが売れる仕組みと価値あるコンテンツを生みだす活動をすればよいのに。

追記

こんな話も。

これを踏まえ、Culture First推進団体は、2008年12月に動画投稿サイト「ニコニコ動画」において、6万人規模のアンケート調査を実施。その結果も会見の中で紹介した。ニコニコ動画を選んだのは「そこのユーザーが私的な録音録画に一番密接であり、コアなユーザーなのではないかと考えた」(JASRAC菅原理事)からだという。

デジタルチューナのみでの補償金逃れは「法的処置を」 - Hyobans(ヒョーバンズ)

コアなユーザーであることを認識しています。なので、

また、今回の調査結果と、総務省のパソコン利用率のデータなどから、年代別に所有するPCに保有されている楽曲数を推計。10代〜30代で、最低でも国内で239億曲が保有されているという結果が出たという。

デジタルチューナのみでの補償金逃れは「法的処置を」 - Hyobans(ヒョーバンズ)

コアなユーザーが、たとえば他の人の10倍PCを活用して楽曲を保有していると仮定したら、最低でも、という数字は大きく下振れするわけですが。最低でも、というのはニコ動ユーザー以外の全員も同じ割合で保有していたら、ということだよね?ニコ動ユーザーがコアなユーザーだということを認識しているのになんでそうなるのか。検算していないから考慮しての結果かも知れんけど。

摘発されたのは「炎上」を起こしたことに対してではないはずなのだが

もうだいぶ突っ込まれているけれども。

著名人などのブログに悪意の書き込みが集中して閉鎖に追い込まれたりする問題で、警視庁は、男性タレント(37)のブログを攻撃した17〜45歳の男女18人について、名誉棄損容疑で刑事責任を追及することを決めた。

 「殺人犯」などと事実無根の書き込みが繰り返されたという。警察庁によると、「炎上」と呼ばれる現象を引き起こす集団攻撃の一斉摘発は初めて。匿名を背景にエスカレートするネット世界の“暴力”に歯止めをかける狙いがある。

芸能人ブログを集中攻撃、「炎上」させる…18人立件へ(読売新聞) - Yahoo!ニュース

どう見ても「名誉棄損*1」容疑にしか見えない。「警察庁によると、「炎上」と呼ばれる現象を引き起こす集団攻撃の一斉摘発は初めて。」なんて警察庁が言ったのであれば、警察として間違っていないか?それとも、炎上とは名誉棄損を伴うものであると、犯罪用語としていつの間にか定義されたのであろうか。

ここで暴力と比喩表現されているのはあくまで「名誉棄損」になる書き込みであり、またその執拗性なんだろう。悪意の書き込みが集中、というのも正直犯罪の構成要素になるかは微妙なところだ。

匿名を背景に行われるネット世界の"暴力"というのは確かにあると思うし、一部でエスカレートしているのも事実。ある程度ネットのインフラを知っている人はそんなもの真の匿名でもなんでもないと思っているし、再三警告もしてきている。

でもね、単に筋の通らない意見に対する反論が大量にされるというだけの、確かに書き込みは集中するけど悪意でもなんでもないようなものも炎上といわれる。むしろブログ主の悪意のほうが問題だ、というようなものもあったりする。炎上だから罰せられる、というわけではないはずなんだが。本気で警察はこんなことを言っているのか?

一部の人向け追記

なお、僕は2ちゃんねるに書き込みをすることはほとんどありません

*1:本来名誉毀損のはずだが新聞ではこう書いても良いらしい