みなさん、こんにちは。「時のらせん」注目のカード紹介で「青」のレビューを書かせてもらうことになった津村です。

  全体的な印象としては、青いタイムシフトカードは他の色のタイムシフトたちと比べると少し地味な印象をうけました。というか、ほかの色に豪華なカードが多すぎです! しかし、そんな青にも色々なストーリーを生み出してきた名カードや、かつての有名なデッキの核となったカードも採録されています。そのあたりを中心に紹介していきましょう。

  ところで、僕がマジックを始めたのは大体7年前くらいなんですが、それよりも前に活躍したカードも「時のらせん」にはあったりするわけです。今回のエキスパションは昔からやっている(&やっていた)人にはたまらないでしょうね。これからマジックをはじめようって人には覚えるルールが少し多くて大変かもしれませんが、ここで覚えてしまえばエクステンデッド、はたまたレガシーやヴィンテージといったあたりをはじめる時も役に立つので、がんばって覚えてみましょう。

  それではカードの紹介へ移りたいと思います。


■心霊破

初登場:アルファ版(1993年)

  今回の青いタイムシフトカードの中で1番の注目株です。実はこの《心霊破》がもとになってデザインされた赤いカードがありまして、みなさんご存知かと思われますが、それは現在スタンダードで大活躍中の《黒焦げ》です。

  今まで、相手に{R}マナがなければほとんど警戒することはなかった直接火力。それももう昔の話で、これからは青いデッキを相手にするときもライフが4以下にならないように注意しなければいけません。おそらく、青緑のビートダウンデッキなどでよく見かけるようになるでしょうし、《黒焦げ》と競演した重火力のデッキなんかも面白そうです。

   基本セットのアルファ版で初登場したカードなので、13年前の遺物です。そのころ僕は…7歳!?


■ミューズの囁き

初登場:テンペスト(1997年)

  《ミューズの囁き》は僕がマジックをはじめるよりも前、言ってしまえば大昔に活躍したカードです。序盤はただの1マナで1ドローというキャントリップ呪文ですが、後半になるとこいつの真価が発揮されます。

  場が落ち着いてしまってから、相手のターン終了ステップに「バイバック」でこれをプレイすれば、毎ターンただ同然でドロー出来てしまうというわけです。コントロールデッキが好きな自分としては、早く使ってみたい1枚です!

ランディ・ビューラーの『ドロー・ゴー』
1998年度世界選手権 / スタンダード

18《島》
4《流砂》
4《隠れ石》
-土地(26)-

1《虹のイフリート》


-クリーチャー(1)-
4《対抗呪文》
4《放逐》
2《雲散霧消》
3《禁止》
4《魔力の乱れ》
3《マナ漏出》
1《記憶の欠落》
4《衝動》
4《ネビニラルの円盤》
4《ミューズの囁き》
-呪文(33)-
2《転覆》
1《丸砥石》
4《水流破》
4《シー・スプライト》
4《不毛の大地》
-サイドボード(15)-

■アトランティスの王 

初登場:アルファ版(1993年)

  《アトランティスの王》は古くから愛されてきたカードで、僕の友達にもこいつが好きで好きでしょうがいない!って人がいます。おそらく、熱心なファンの数は少くないんじゃないかと思います。

  かつて一時代を築き上げた「ブルーオーブ」、「フィッシュ」と呼ばれるようなマーフォークを主体としたデッキで大活躍したクリーチャーです。僕自身はよく相手に出されて困っていた側なんですが、それもそれで懐かしいもんですね(笑)

  もしも青いビートダウンデッキが流行るようになれば、《アトランティスの王》の勇姿もすぐに拝めるはずです。前述の《心霊破》もありますし、なんとなく期待できそうな予感。ただ、もう少しマーフォークの頭数が増えてくれないと話になりませんが、そこは次のエキスパションに期待ということで!

アラン・カマーの『ターボ・ドライアド』
グランプリ・ラスベガス / エクステンデッド

6《島》
4《Tropical Island》
-土地(10)-

4《マーフォークの物あさり》
4《アトランティスの王》
4《クウィリーオンのドライアド》
3《ガイアの空の民》


-クリーチャー(15)-
4《好奇心》
3《撃退》
4《Force of Will》
4《目くらまし》
4《噴出》
4《渦まく知識》
4《手練》
4《冬の宝珠》
4《土地譲渡》
-呪文(35)-
2《誤った指図》
3《エメラルドの魔除け》
2《ブーメラン》
4《水没》
4《寒け》
-サイドボード(15)-

■ダンダーン

初登場:アラビアンナイト(1993年)

  青のミラーマッチ(=同系統の対戦)で非常に有効な1枚。こいつに除去を打たれそうになって、それにスタックして《噴出》を打って《島》がなくなって死んでしまった…という有名な話もありますので、みなさんスペルを打つ前によく自分の場をちゃんと確認しましょう。ちょうど、《噴出》によく似たカードも今回出ていますし。

  真面目な話をしますと、今はラヴニカで登場した優秀なデュアルランドがあるので、昔より使われる機会は多いかもしれません。


■放蕩魔術師

初登場:アルファ版(1993年)

  みなさん「ティム」という言葉を耳にしたことありませんか? これはいわゆるマジック語(マジック=スラング)の中のひとつで、「タップして1点のダメージを与える」能力を持つクリーチャーのことです。元祖であるこの《放蕩魔術師》が、とある映画の「ティム」というキャラクターに似ていたことからそう呼ばれるようになったそうです。いつしか「タップして1点与えるクリーチャー」能力を持つクリーチャーや能力それ自体が「ティム」と呼ばれるようになっています。

  構築フォーマットの試合ではあまり見かけたことはないですが、ことリミテッドにおいて「ティム能力」を持ったクリーチャーが弱いなんてことはそうはないです。そんなわけ、でブースタードラフトでは本家「ティム」をぜひ取って、そして使ってみてください。期待通りの活躍をしてくれるはずです。

  ちなみに僕とKJ(=鍛冶 友浩)は人一倍「ティム」が好きで、チーム・リミテッド戦で練習する時はどっちがティムを取るかよくケンカしたくらいです(笑)


■意志を曲げる者

初登場:レギオン(2003年)

 「変異」界の中でもかなり強力な能力を持っている《意志を曲げる者》。僕はこいつがいたオンスロート・ブロックからリミテッドを始めたんですが、こいつの凶悪さは今でも覚えてます。除去スペルを跳ね返されてしまうのはもちろんのこと、当時の環境の最高級レア《戦慄をなす者ヴィザラ》でさえ殺せてしまうという能力が{1}{U}というのは軽すぎると当時でも相当騒がれていました。

  また、レスポンスの非常に難しい「刹那」という新能力をもったカードに対しても《意志を曲げる者》は対抗できます。ちょっと難しいですが、「変異」クリーチャーを表にするのは「常在型能力」、それによって対象変更を起こすのは「誘発型能力」だから、ルールの盲点をつけているわけです。これは注目のテクニックですね。

  いま挙げたような「時のらせん」ならではの例も含めて、例も見た目以上に能力が強い《意志を曲げる者》。リミテッドなら早めに取って絶対に損はないです。僕が好きな「ティム」もこいつの前にはメロメロ。


■非凡な虚空魔道士

初登場:オンスロート(2002年)

  マジックの歴史を語る上で絶対に欠かせない人物、それが史上最強のマジックプレイヤーであるカイ・ブッディです。そんな彼がマジック・インビテーショナルに優勝した際に作られたカードがこの《非凡な虚空魔道士》です。

  しかし、実際に彼がデザインしたものとは大きくかけはなれてしまい、比較的平凡なこのカードはブッディのような非凡な活躍はできませんでした。それでも、レガシーのトーナメントでは実際に使われていますし、環境が変わればカードの評価もまた変わるものです。

  ブッディのライバルであるジョン・フィンケルの肖像が描かれた《影魔道士の浸透者》も復活していますし、これからこの2枚がどう使われるかに注目ですね。

 以上、ほかの色と比べてやや少なめですが、タイムシフトで注目すべき青いカードはこんな感じです。みなさんにとって思い出のカードは帰ってきていましたか?

  次は「世界のKJ」が黒いタイムシフトカードを紹介してくれる予定です。黒好きな方は必見ですよ! それでは失礼します。


津村 健志(つむら・けんじ)

  2005年に頭角をあらわしたプロプレイヤーで、世界のプロプレイヤーたちの頂点である『プレイヤー・オブ・ジ・イヤー』賞(=シーズンMVP)を獲得して新世代のエースとして満天下にその名を轟かせた。

   いまや、2005年度は苦手種目としていたリミテッドをも克服し、海外のグランプリに遠征してアウェイで戴冠を果たすほどにまで成長している。

 

HOME