中国新聞

  (下)百万都市への導線

電化延伸「切り札」か
―利便性を支える負担主体はなく―

 オレンジ色の車両のアストラムラインと接続するJR可部線の大 町駅。朝の通勤、通学時間帯のホームを、乗り換え客が行き交う。 可部線は、都市路線の顔も併せ持つ。

 ●渋滞時に10分間隔

JR可部線(右)とアストラムライン(左上)が接続する大 町駅(広島市安佐南区大町東)

 「これからは、広島市に頑張ってもらわないと」。二十日、JR 西日本広島支社であった協議会の前、亀井郁夫参院議員(広島) が、可部線対策協議会長の秋葉忠利広島市長に声を掛けた。対策協 がJRに提示した五項目の再生プランのうち、「可部―河戸間の電 化延伸」の実現を促す言葉だった。

 計画の中身はこうだ。

 現在は横川―可部間の電化区間を、可部より一駅、三段峡寄りの 河戸(安佐北区亀山)まで延伸。同時に電車の行き違い施設を整備 するなどして、横川―河戸間で朝夕ラッシュ時の十分間隔の運行を 可能にする。これで可部、河戸両駅の乗降客と、可部―三段峡間の 輸送密度も大幅にアップする、と対策協は試算する。

 この計画は、JR側の腹案でもあった。一九九八年四月、可部― 三段峡間の廃止計画を明らかにした当時の四方弘文広島支社長が 「廃止と合わせて、河戸電化を検討したい」と発言。山間部の廃止 との交換材料を提示した格好だった。

 ●見積もりで30億円

 事業費の見積もりは駅の整備なども含め約三十億円。JRと折半 としても、税収不足に悩む市の負担は重い。多額の財政負担をして 可部線全体の存続を図るか、JRの負担で市部の利便性の向上を図 るか―。選択を迫られた広島市の立場は複雑だった。

 協議会の後、秋葉市長は「可部線全体を存続させる一つのプログ ラム」と位置付け、「たる募金をしてでも」と自己負担への覚悟を にじませた。電化延伸は、広島市にとって可部線存続に向けた「切 り札」だった。

 それでも、JR側はクールだ。仲井徹広島支社長は「存廃と電化 は別問題」とかわし、「電化の実現は、自治体しだい」と、部分的 な費用負担にも後ろ向きだ。

 ●車からの乗り換え

 都市部と山間部をつなぐ亀山地区。六年前、「可部駅・河戸駅間 電化促進期成同盟会」が結成された。平盛儀範会長は「河戸駅が便 利になれば、乗用車から列車に乗り換える人も増え、三段峡までの 乗客数も増加するはずだ」と強調する。

 「都市と中山間地域の交流・連携を深めるため、重要な交通機 関」。先月開かれた「がんばれ! かべせん決起大会」で、野上昭 典戸河内町長が読み上げた宣言文にそうある。過疎地の踏ん張りと ともに、百万都市の懐の深さも、可部線の生命線を握っている。


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