政府が副総裁に起用する方向とみられる渡辺博史前財務官は、国際金融の経験が豊富で、海外の金融当局や政官界とのパイプも太い。市場でも「白川氏の補佐役として適任」と好意的な見方が多いが、民主党などには財務省OBの天下りを批判する声がなお強い。
渡辺氏は財務省では国際局の担当が長く、財務官時代は通貨政策の最高責任者として、国際金融に精通しているとの評価が高い。「通貨マフィア」と呼ばれる世界の金融当局に知己も多い。米国のサブプライム住宅ローン問題で世界経済が大混乱し、日本も一層の国際協調が求められる中、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次シニアエコノミストは「渡辺氏のネットワークと交渉能力がフルに生きるのでは」と期待する。
また、戦後最長の景気拡大を続ける日本経済も踊り場で、金融政策も重要な岐路に差し掛かっている。日銀の金利正常化路線と政府の財政再建という矛盾しかねない命題を解く上で、「財務省出身者が日銀の枢要なポストにある意義は大きい」(矢嶋氏)との見方もある。
しかし、「財金分離」の観点から財務省OBの総裁就任に抵抗した民主党には、「副総裁でも天下りは認められない」との声がある。一連の総裁人事騒動で財務省と日銀の間が「相当ぎくしゃくしている」(日銀幹部)のも確かで、渡辺氏を取り巻く環境も不透明感が強い。(柿内公輔)
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