運命 - 第3話

第1話第2話・第3話

by マイケル・G・ライアン
Translated/Compiled by YONEMURA "Pao" Kaoru


 行ってくれ。クロウヴァクスはジェラードにそう祈った。私はこの結末を受け入れよう。失敗したのは私なのだから。

 ウェザーライト号が彼らに向かって降下してくる間に、ミリーだったものは、ミリーもセレニアも見せたことのない激怒に任せ、クロウヴァクスをばらばらに引き裂こうとした。クロウヴァクスは、なぜ彼女が彼を即座に殺そうとしないのか想像もできなかったが、抵抗はしなかった。

 プレデターは、空中を飢えた鮫のように旋回していた。

 「掴まれ!」

 上空からジェラードの声がする。クロウヴァクスが空に浮かぶウェザーライト号を見あげると、その船体は救済の光に煌めいていた。ジェラードは船のへりで、近づいてくる敵艦と、眼下での一方的な戦闘とをせわしく見回していた。その疲れた表情が、戦場の不利な状況を物語っていた。ミリーの姿を見るたび──クロウヴァクスは一瞬見ただけだが──彼は、零れそうな悲鳴を飲み込んでいるようだった。その側で、ターンガースはクロウヴァクスの手の届く範囲に縄梯子を投げた。

 「行ってくれ!」

 クロウヴァクスは叫び返した。

 「行ってほしければ、今すぐ来い」

 ジェラードの返事は、機械的に聞こえるほどに平淡なものだった。

 「早くしないと、私たちまでやられてしまう」

 ミリーだったモノは、直接手を下さず、ジェラードがそのクルーともどもヴォルラスの庭、死地へ飛び込むのを待ち構えているようだった。罠がその顎を閉ざしたあと、クロウヴァクスは何度も考えを巡らせた。ああ、セレニア、いったい何をしたのですか。

 「また私を捨てるのね」

 ハシゴに手を伸ばすクロウヴァクスの背後から、セレニアの声でミリーは言った。

 クロウヴァクスは再び目を閉じ、既に失われた、救済の優美さを持ったセレニアの顔をその声から思い出していた。

 「さようなら」

 クロウヴァクスは囁いた。その声がミリーに届いたかどうかを確認する間もなく、ターンガースが釣り人のように一気に縄梯子を引き、クロウヴァクスがジェラードにミリーの死を告げた、まさにそのウェザーライト号の甲板へと引っ張りあげた。

 彼はあやうくハシゴを取り落とすところだった。

* * *

 後に、傷を固定して力尽きたように眠っていたクロウヴァクスは、暗闇の中でジェラードに話していた。ジェラードのあまりの悲嘆に、クロウヴァクスは顔を上げることができなかった。

 ウェザーライト号は既にラースを離れ、ミリーだった不死の存在は、ジェラードであっても手の届かない距離になってしまっていた。もう戻ることはできない。

 「私の言ったことは全て真実です」

 クロウヴァクスはそう言って話を終えた。彼が横たわっている光のない船室は、彼が話している間、まるで墓地のように冷え込んで感じられた。彼は小さく震え、橋の上での戦闘で手に入れた白い羽根を強く抱きしめた。

 「それから、私はあなたと一緒に船に戻りました。彼女は──彼女たちは、戻りませんでした。それで全てです」

 ジェラードは長い間黙り込んでいた。それは、クロウヴァクスが、ジェラードが自身の恐怖、痛み、疑念について表現する言葉を見つけられないでいるのではないかと思うほどだった。

 「ああするしかなかったろう」

 ジェラードがようやく口を開くと、そこから出てきたのは彼自身に言い聞かせるような言葉だった。

 「助かりたいと思っていない奴を助けるなんてことはできやしない。時間もなかった。お前を助けるので精一杯だった」

 「ええ。運命は気紛れで、しかし避けようもないものです」

 「一言だけいいか」

 ジェラードの声は静かで、思慮を重ねたもので──そして、クロウヴァクスには、脅迫的に聞こえた。ジェラードがクロウヴァクスの寝台の隣から立ち上がったため、彼の表情はもうクロウヴァクスには見えなくなっていた。

 「忘れるな、クロウヴァクス。運命なんて存在しない。全ては選択の結果だ」

 「……ええ。約束します、忘れませんよ」

 クロウヴァクスは、そう応えたのだった。


HOME 原文(英文記事)