始発となる東急田園都市線の中央林間駅に着いたのは3月29日の朝9時半。切符売り場には行き先までの切符は売っていなかったため改札横の駅員に尋ねると、とりあえず渋谷までの切符を買って現地で精算して欲しい、とのことでした。今回限りの臨時列車とあって通しの切符は用意されていなかったようです。
ホームは地下一階。神奈川県の中央林間駅と栃木県の東武日光・鬼怒川温泉駅を、東京都やさいたま県を経由して一本の臨時列車で結びます。旅行ファンだけではなく鉄道ファンもまたこのイベントを見逃さなかったようで、出発50分前だというのにすでにドアの前には列ができていました。
臨時列車のアナウンスが幾度と無く流されるなか、フラッシュが焚かれると間もなく、”鉄道ファンの皆さん・・・、フラッシュは焚かないようご協力をお願いします”。鉄道マニアを鉄道ファンと呼ぶ気遣いと、フラッシュを焚かなければ写真撮影は可能であるという二つの意味がこのアナウンスには込められていると感じました。
10時15分、ついに臨時列車が二番ホームに到着。そこて起きたどよめきの理由は、なんと臨時列車は普通の通勤電車だったからです。
ドアが開き座る席を争うところまで通勤電車並みで、途中からこの臨時急行に乗り込んだカップルが、臨時列車にしてはあまりに”普通すぎる”と嘆いたくらいです。かくも普通の電車にわざわざ乗る意味がどこにあるのか?そんな疑問をよそに混雑と賑わいは終点まで続きました。
中は本が読める程度の混雑。その混雑に耐えかねて途中で特急スペーシアに乗り換えた人もいたようです。となりには鉄道マニアらしい十名程度の集団がいて席に陣取る人とつり革に捕まる人が半々くらい。始発から終点まで要する時間は4時間です。
列車の旅の楽しみはその土地の名物を駅弁で楽しめること。隣の鉄道ファン集団の一人はつり革につかまったまま、トイレ休憩中にホームにあるコンビニで買ったらしい弁当を完食。弁当と共に貴重な体験をもかみしめていたに違いありません。
終着駅の一つ、鬼怒川温泉駅に到着したのは2時21分。4時間と1分の電車の旅が終わりました。改札までは乗り越しの精算で混み、改札の外も記念品をもらう人や抽選に参加する人たちで原宿駅のようなにぎわいです。
駅の外に出た途端にイベントの喧噪が終わり、標高300メートルに吹く風が日光・鬼怒川を感じさせます。予約したホテルも混んでいるらしいことがフロントの口振りからも分かりました。
程良い湯加減の温泉と、海の幸も揃った料理と、そして山河の景色を楽しみ帰途に着きました。左の写真は30日の午前中に鬼怒川沿いを撮った一枚です。
30日にも東武日光・鬼怒川温泉から中央林間駅までの臨時急行列車が予定されていたのですが、混雑を避け東武鉄道の快速で都内に向いました。
乗った列車はボックス席があるタイプで、途中駅のホームでは駅弁を売るおじさんが声を枯らしていました。おじさんはいい味を出していましたが弁当がどんな味なのかは食べなかったので分かりません。
その後のニュースによるとこのイベント列車は関係者にとっても予想以上の賑わいだったようです。記念品も足りなくなるくらいだったそうで。たしかに筆者もこのイベントに便乗した一人でイベントによる賑わいと温泉宿のゆったりした時間を楽しませてもらいました。
今回のような鉄道会社間の相互乗り入れは今後も増えてゆくのでしょうか?せっかくレールというインフラがあるのですから、使わなければ損というものです。どの駅とどの駅を結ぶか、その組み合わせに思いを巡らせた旅でもありました。
-2003/3/31-4/4
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