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日本人らしさが抱える矛盾(むじゅん)


 夫が妻に暴力をふるう場合、妻はなかなか外に向かってその実情を訴えることができないのだそうです。どうしてなのでしょうか?今はその力が衰えたとは言え、日本には夫や父親を立てるべきだという考え方が存在します。これは目上の人の言うことに従うべきだという”忠”の思想が日本人のこころの中に生きているためだと思います。忠は忠犬ハチ公の忠です。

 ところがこの忠は日本に歪曲して伝えられた儒教のなかの教えの一つだと専門家は指摘しています。儒教の開祖である孔子の教えに素直に従えば、夫から暴力を受けた場合、夫のことを考えて”夫を正す”必要があります。夫を正すことは我慢することではなく、警察にその実情を訴えてその罪を重ねないようにすることです。

 これは会社でのセクハラにも言えることです。上司による性的嫌がらせを我慢してはいけません。上司のためを思って、その上司を正すために告発すべきです。そうしないと、さらに大きな過ちを犯して、取り返しのつかなくなる可能性があるからです。

 儒教思想は日本人のこころに深くしみこんでいると考えています。ところが残念なことに、以下の問題点があるのではないかと考えています。

  1. 儒教思想がゆがんだ形で伝わっている
  2. 儒教思想は乱世に向かない

 儒教思想がゆがんだ形で伝わっている理由は、その時々の政府の事情に都合が良いようにつまみ食いされてきたためだと考えることができます。これについては儒教思想をよく知る専門家によってすでに指摘されていることでもあります。

 孔子は2500年前の中国の人ですが、それでも『古き良き時代』の理想に戻ろうとして、その時代の教え、つまり古典を勉強してそれを国々の殿様にあたる諸侯に訴えたのですが相手にされませんでした。どうしてなのでしょうか?

 孔子が憧れたのは周の時代の平和な時代、孔子が生きた時代は部下と上司が入れ替わる下克上の時代です。どこから矢が飛んできて、命を失うか分からない戦国時代です。礼を重んじ、徳ある人になる前に矢を避けて生き残るための知恵が優先され、孔子の教えに至らなかったのだろうと思います。

 それでも外との争いをやめ、その体制を維持しようとする時代にはおおいに役に立つようで、中国でも日本でも役人を登用する場合の試験科目に入っていたようです。今なら公務員試験の試験科目に『論語』が入っているようなものです。そして、中国は清の時代まで、日本では江戸時代まで朱子学という形で重用されていました。中国も日本も鎖国していて、天下を治めるには都合が良かったということになります。

 ところが照明用の脂をとるために捕鯨が必要で、その中継基地を求めていたアメリカからペリーが黒船と共に日本にやってきて、開国を迫りました。中国ではお茶をイギリスに売っていましたが、その貨幣として使われていた銀が足りなくなったイギリスは、これは薬だと中国を騙して”アヘン”を売りました。さすがにアヘンを飲み続ければそれが薬では無いことが分かります。アヘンにむしばまれた人々をみた中国の役人がアヘンを捨てたそうです。ところがそれをみたイギリスが怒ってアヘン戦争になったと聞いています。

 こうやって、イギリスに破れ、日清戦争で日本にも敗れた中国がその中心に据えていた儒教、そしてその開祖である孔子を批判するようになっても不思議ではありません。変化の激しい時代であればあるほど、”徳”を守り、”礼”を重んじていては、悪意ある敵にやられてしまうと、孔子を退ける人が増えると考えることもできます。

 銀行も保険会社も競争のない平和な時代には、サービスに差がないために”礼”を重んじようとしたのでしょうか?お客様にたいする言葉使いや礼をするさいに体を傾ける角度の方に神経を使いすぎて、本来のサービスに目が届かず、外資系との競争にさらわれる現在になって、そこの社員も”お客さん”も含めて、外資系との間にサービスでも実力でも大きく水をあけられていることに気がつき始めました。

 サービスの点で優れた外資系への乗り換えは着実に進んでいるようです。銀行も保険会社も実力が伴わないとつぶれてしまう乱世の世に突入しています。生き残るためにはどうしたら良いのでしょうか?少なくとも金融機関の場合は、孔子が教える”信用”が一番だということはいつの世でも変わらないと思います。

-2002/4/28




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