2002年の7月31日に発表された厚生労働省の
簡易生命表と呼ばれる人口統計データによると、女性の平均寿命(ゼロ歳児の平均余命)は84.93歳、男性は78.07歳で、相変わらず世界一だそうです。
ゼロ歳児がこの後生きるであろう平均年数を一般的に平均寿命と呼ぶのだとすれば、すでに30歳まで生き延びてきた人の平均寿命は年齢に平均余命を加えることで計算できます。簡易生命表より計算すると、
となります。すでに70歳まで生き延びている人の平均寿命も同じようにして、
となります。「長生きすればいいというもんじゃない」とも言えますが、世界一だということは世界に誇れるレベルであることもたしかです。なぜ日本人は長生きなのでしょうか?これについては国内でも長生きである沖縄の例がよく紹介されます。そして豚肉、海草が多い食生活、穏やかな気候、さらにゆったりした気持ちの持ち方が長生きの秘訣だという話も耳にします。
日本人が主に脂気の少ない和食を食べ温暖な気候風土のなかで暮らしていることが長生きの原因であるとするなら、日本人は昔から長生きだったはずです。ところが、ついこの間までは平均寿命は50歳くらいだったという話も聞きます。もう少し詳しくみてゆく必要がありそうです。
厚生労働省が公表している昭和22年の平均寿命は、
となっていて、アフガニスタンの平均寿命より少しましな程度の数値です。早死にする人が少なくなれば平均寿命は延びることから、各国は早死にの原因を取り除くことに必死になります。明治時代の日本人の平均寿命はたしか女性が44歳、男性が42歳くらいだったと記憶しています。死因のトップは結核でした。
結核で亡くなった「たけくらべ」の樋口一葉(1872〜1896)は24歳、肺結核で亡くなった「一握の砂」の石川啄木(1886〜1912)26歳、「武蔵野」の国木田独歩(1871〜1908)37歳など、いずれも結核による死亡率が高かった時代に亡くなっています。
1882年、結核の原因となる結核菌がドイツの細菌学者コッホ【Robert Koch
(1843-1910】によって発見され、日本でもツベルクリン反応の検査が行われ結核の予防が普及し、日本人の死因の上位から結核が姿を消しました。
昨年の日本人の死因の上位は、1)悪性新生物、2)心疾患、3)脳血管疾患の順になっています。1)の悪性新生物とは悪性腫瘍のことで、癌と肉腫があります。2)の心疾患は心臓病、3)の脳血管疾患は脳卒中ということで、これらは日本人の死因の三分の二を占めるいわゆる生活習慣病(成人病)です。
それでも、これまで当たり前だと思っていた和食の習慣がたまたま生活習慣病の予防になっていたため、長寿世界一を誇ることができたようです。ところが美味しさを求めてその習慣は次第に洋食へと変化し、油断ができないところまできています。
それでもまだ長寿世界一だということはどういうことなのでしょうか?これ以上の洋食化が寿命を縮めるというのなら、そのまえに和食を食べる習慣を美味しく取り戻す工夫が必要になりそうです。
-2002/8/10
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