「緊張状態から解放されると人は笑う」と言われています。そうした状況を意図的に作り出せるのが笑いのプロと呼ばれている人たちです。笑いのからくりは一般の人にも理解できますが、それで実際に人を笑わせ、しかも商売にするためには特別な才能が必要になるようです。
風刺漫画は漫画という表現手段を用いてはいますが、笑いを構成する要素となる緊張と緩和がちゃんと含まれています。退屈で仕方がない音楽の授業で、教科書に載っているバッハやベートーベンの肖像画にする落書きにも、バッハやベートーベンによる緊張と落書きによる緩和(解放)という具合に、笑いの要素が含まれています。
風刺漫画に登場する人物は、人を緊張させるにふさわしい、著名人、金持ち、権力を持っている政治家、利権を持っていて安泰な集団など、ちょっとぐらいからかってもびくともしないような人たちが選ばれます。日本の伝統芸能である狂言も、時の政治家や実力者をからかったもので、大衆はそれを見て大いに笑ったわけです。
大衆には重税に苦しむ代わりに税金を取る側をからかって笑う楽しみが与えられるわけです。一方権力者らには権力が与えられているため、もはや人を風刺して笑う楽しみはありません。
たとえば、植民地支配以降、優位にあるキリスト教国の新聞が、現在劣位にあるイスラム世界の象徴とも言える預言者ムハマドを風刺漫画でからかったらどうなるでしょうか?これは、笑えない風刺漫画の条件を満たしているように思います。イスラム教の教えがテロを容認している、という誤った解釈や無知が、今回の風刺漫画を載せる土壌になっているとも伝えられています。
預言者イエスの風刺漫画はNGで、預言者ムハマドの風刺漫画はOKと、キリスト教国家ドイツの新聞が判断していたらしいということも明らかになりました。なんだか”ずるい”と言わざるを得ません。イスラム教徒らが許せないのはこのずるさだろうと思います。
ヨーロッパ人には笑いのセンスが無いのか、それとも16世紀にイスラム系の
オスマン帝国に脅かされたときの衝撃が未だに忘れられず、亡霊となってヨーロッパ人の多くにとりつき、今だにイスラム教の預言者ムハマドを、微動だにしない風刺漫画の対象ととらえているのでしょうか?
-2006/2/11
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