「反日デモに参加する人は何を考えているのか?」知りたいところですが、残念ながら日本人記者がデモ参加者にインタビューできるような状況ではありません。デモ現場に日本人が近づくことが危険きわまりないからです。
デモ参加者に笑顔が見えることからピクニック気分でやっているらしい、とか。携帯電話やインターネットで連絡を取っていることから、富裕層が含まれているらしい、とか。失業者も憂さ晴らしに途中から参加しているらしい、とか。デモをやっているうちに盛り上がり、群集心理が働いて一部投石や破壊活動に及んでいるのではないかと推測するばかりです。一人一人の声が聞こえてきません。
そう思っていると、ニューヨークタイムズ紙にKEITH BRADSHERという人が書いた香港の
反日デモの記事が見つかり、そこにデモ参加者のインタビューが載っていました。香港での反日デモは17日の日曜日に行われ、予定参加者500名、当日参加者は主催者発表で12000名、警察発表で5000名だったそうです。
デモに参加した元放射線技師のLauさん(76歳男性)は、今でも日本軍が1941年12月の香港占領時に彼の家に押し入り女達を連れ去ったことを思い出すそうです。連れ去られた人たちを二度と見ることはなかった、とも言っています。
また、デモに参加した元船舶修理業のYungさん(75歳男性)は、彼の家族は日本統治時代に中国本土で餓死寸前になり、戦争が終わるとすぐに香港に移住したそうです。これまでは戦争当時の感情や記憶を抑圧してきたと説明しながら、抗議行動をしたのは今回が初めてだと話しています。
デモに参加した事務職のWongさん(30歳男性)は、日本の常任理事国入りには反対だと話しています。香港の日本統治時代のことについては、当時は食料を日本軍に差し出す必要があった、くらいしか知りません。香港では日本と同盟を結んでいた英国の統治が続いたため、日本統治時代のことを学校で教えないからだそうです。
今回香港でのデモを主催したのは香港の民主系のグループで、北京寄りのグループは今回これに加わらなかった、とされています。参加しなかった理由は、民主系のグループは北京政府を批判しようとしているしもっと過激なスローガンがあるため、別行動を取ることにしているからで、別に北京政府から指示があったわけではない、とのことです。
暇つぶしから憂さ晴らし、日本統治時代の体験に根ざした深刻な抗議や、中国民主化の手段として反日運動を利用する人など、反日デモに参加する人の心理は様々なようにも思えますが、いずれも何らかの”解放”を求めていることは確かなようです。
-2005/4/19
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