xSUNxコラム・インデックス国内社会・犯罪
折り鶴はなぜ燃やされたのか?


 昔から盗人(ぬすっと)にも五分の理がある、と言いますが、広島の平和記念公園の折り鶴を燃やしたとされる22歳の学生にも”理”があるというのでしょうか?

 ご存じのように、平和公園絡みの事件は今回が初めてではありません。2001年の12月には外壁への落書きがされ、2002年の2月17日には不審火が起こり、折り鶴5万羽が焼かれています。さらに3月5日には慰霊碑にペンキがかけられる、という事件も起きています。その翌日にはペンキをかけたらしい男が監視カメラに写っていたことが伝えられました。

 しかし監視カメラが150メートルも離れたところに設置されていたことやビデオの解像度が低いことなどから、犯人を特定するには不十分だったようです。同じような事件が繰り返されないようにするため、同じ年の10月には不審な侵入者を検知するための赤外線センサーが設置され、監視カメラも増設されています。今回このカメラ映像に犯人らしい三人の映像が録画されていました。

 この映像を手がかりにして署員らが捜査を続けていましたが、ついに広島旅行中の三人を捕まえています。犯人は大阪の大学に通う学生で、放火の動機は、留年が決まり、就職もうまくゆかないための憂さ晴らしだった、と本人は言っているようです。

 本人は話してはいないようですが、ゴミがゴミを呼び、落書きが落書きを呼ぶことを考えると、2001年12月の落書き以降は便乗だったのだろう、と思われます。つまり、”平和の象徴”がすでに汚され、汚れているから、自分も汚し、燃やしても許されるだろう、との錯覚を引き起こしたと考えられます。

 今回の事件で平和公園に監視カメラが置かれていることや、悪のりするとすぐに捕まってしまうこと、さらに捕まれば実名が公表され、限りなく就職が不可能になることも含めて広く知られることになりました。今後は似たような事件は無くなってゆくものと思われます。

 監視カメラによってこの種の悪のりが無くなったとしても、最初の落書きの引き金になったと思われる何物かが消えたわけではありません。この何物か、とはいったい何なのでしょうか?

 今回のような折り鶴放火は”器物破損”に分類されるようです。この器物破損は平成4年から14年の10年間に30,966件から145,936件と約4.7倍に増加しています。(平成14年度警察白書)

 原因は、悪いことをしていると通りがかりの大人が注意するという地域社会のしくみが崩壊したため、と分析されています。と言っても昔の大人は偉くて、最近の大人はだらしない、と言えるほど単純ではないようです。昔の大人はしっかりした人も、だらしない人も子供には目を付けていたし、注意するのは特別に勇気が要ることでもなく自然な行為で、意識が低いとか高いという次元では無かった、と記憶しています。

 従って、犯罪防止のため地域の大人たちは悪いことは悪いと教えるようにしましょう、と昔に戻すべく訴えても効果はないと思います。それはそうした地域社会が崩壊してしまっているからで、壊れてしまった物はたいてい元に戻らないからです。

 万引きをした少年らは生き残り、悪いことを悪いと教えようとして後を追ったとされる大人は殺される、時代です。たいていの大人たちが、これで良いのだろうかと疑問を抱きながらも、見て見ぬ振りをするのは自然な流れだと思います。

 あまり気持ちの良いものではありませんが、地域で資金を出し合って監視カメラを取り付けるという動きが広まっています。これなら、命までは取られないし、一定の効果もあります。


 次は広島で目立っている点について考えてみたいと思います。まず有名なのは暴走族です。慰霊碑にペンキが塗られた当時も暴走は続いていました。しかし、この暴走行為はマンガに影響された”悪のり”ではないか、と考えています。

 それよりも気になるのは、広島で続いている学校関係者の自殺問題です。民間出身の校長が首をつって死んでいたと報道されたのは今年の3月10日でした。その原因を調べてみると、先生らとの間で争いがあったようです。

 校長先生には一般の先生が言うことを聞いてくれない場合、他の学校に転勤させたり、あるいはボーナスを下げたりできないしくみになっています。民間の場合、上司が部下の人事権を持っているのは常識で、校長先生も銀行出身と言うこともあり、そのつもりでいたのかも知れません。

 一般の公立の学校の教職員の人事権を握っているのは、その地域の教育委員会です。人事についての権利があるということは、当然責任もあるということで、校長自殺問題対応のために、教育委員会が動いていたようです。

 ところがその教育委員会の次長にあたる人までが7月の4日に首をつって死んでしまいました。二人も続いて自殺するのは偶然ではない何かが働いているためだろう、と思います。教育長が入院していることもあり、次長は事実上のトップにあたるそうです。

 校長の死を受けて尾道市教育委員会がまとめた報告書によると、運動会で国旗掲揚を巡ってもめたことが記載されています。国旗掲揚は文部科学省から県の教育委員会へ、さらに市の教育委員会から各学校の校長に指示されたようです。

 ところが教職員の反対が多くてうまくゆきません。教職員らがまとめた運動会の実施計画書には結局国旗掲揚の部分は無しのままだったようです。この報告書がまとめられたのは今年の5月19日、亡くなったのは7月4日ですから、旧次長の遺書にも思えます。

 教職員組合は平和のためと称して国旗掲揚に反対し、文部科学省は”是正”と称して国旗掲揚を指示しているわけですが、いずれも根っこは評判の悪い組合と、責任をとらない官僚で、いずれも自浄能力がない、とされる組織です。

 現場の教職員と校長らは自分たちの意志で争っているつもりかも知れませんが、現実は組織の末端で代理戦争をやらされ、しかも犠牲者まで出している、と思います。そんなことを続けていると、ますます平和という言葉が汚れ、そこにまたゴミが集まるように思います。

-2003/8/2-5

<PR>
アマゾン>少年犯罪の本

1.少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から ちくま新書
2.少年犯罪―ほんとうに多発化・凶悪化しているのか 平凡社新書
3.少年犯罪―統計からみたその実像
4.実録 少年犯罪奇科学




心理コラムのxSUNx
Since 13th Oct. 2000
トップ
コンテンツ:
 ようこそ! コラム ジョーク集 迷言集 リラックス写真館 トピックス リンク 逆リンク
トピックス: 男心 珈琲 深層心理 自信 使命感 睡魔と睡眠 ストレス 戦争 ダイエット 美学 美容 フランス料理 フリーター 夢のコラム ラーメン・蕎麦 ラジオ
インデックス:
 ジャンル 追加年 用語 登場人物 地域
ジャンル:
  心理 性格 対人 人生 自己 哲学 恋愛 グルメ・美容 家庭・学校 ネット HP作成 購入 新技術 科学 文化 動植物 テレビ・ラジオ音楽 企業・経済 国内政治 就職と仕事 国内社会 海外 医療・福祉季節・レジャー スポーツ他原風景

       

●当サイトは全ページリンク・フリーです。連絡も要りません。
Copyright(C) 2000-2006 xSUNx(サン) all rights reserved.