パウエル長官と言えば二月五日の国連安保理決議で、イラクに対する武力行使の必要性を訴えるなど、最近よくニュースに登場する人です。ブッシュ大統領に対して、国連を重視することや、各国との協調を説いたのもこの人だと伝えられています。
米国の議会やブッシュ大統領よりも米国民の意見を代弁することに優れ、米国民に対する影響力もありそうなパウエル長官とはどんな人なのでしょうか？
ところで、アメリカには外務省という名の行政機関は存在しないため、国務省【
Department of state】が日本で言う外務省にあたり、その省で一番偉い人を国務長官と呼んでいるようです。
パウエル氏が国務長官に就任したのは２００１年の１月、その前は非営利団体『アメリカの約束−若者のための同盟』の理事長でした。１９９５年には『マイ・アメリカン・ジャーニー』と題する自伝を出し、ベストセラーとなっています。
この自伝に関する記述やその他の資料から読みとれるパウエル像は以下のようなものです。
パウエル氏はカリブ海に浮かぶジャマイカからアメリカに移民してきた夫婦の子供として１９３７年の４月５日にニューヨークで生まれ、５８年６月の大学卒業時には陸軍少尉に任命され、軍人となります。現ブッシュ大統領の父親が大統領の時期には軍人としての最高位のポストまで上り詰め、湾岸戦争を指揮しています。このあたりがパウエル氏が古典的なアメリカンドリームの具現者だと言われる理由のようです。
９３に退役し、９５年に自伝を発表。若者の教育にも尽力し数多くの賞ももらい、国民からの信頼も厚いのに、なぜ大統領に立候補しないのかと言えば、家族との生活を大事にするには大統領職は忙しすぎるから、とも伝えられています。
国務長官となった現在、すでに十分忙しいという気もするのですが・・・。彼のこれまでの経歴や主張故に、”彼なら我がアメリカの若者を戦争に追いやって無駄死にさせるようなまねはしないだろう”、という思いがあるようです。
彼の就任以来の発言を拾ってみましょう。
就任直後の２００１年１月には、中国が漢民族をチベットに送り続けており、これがチベット社会を破壊しかねない政策であると語り、同年８月には中国政府に対してダライ・ラマとの対話を求めたことが発表されています。
（靖国参拝や教科書問題で、日本は過去の過ちに対して反省が足りない、と中国から言われたら、中国は現在のチベット社会破壊に対して認識が足りない、と反論したいところです。）
２月には米原潜「グリーンビル」とえひめ丸との衝突事故が起こり、パウエル長官は当時の河野外務大臣に謝罪しながらも、原潜に民間人が同乗したことが事故の原因であるとは明確に言えない、と語っています。これはかつての部下である軍人らと、日本の双方に気を遣った発言であるように感じられます。
あの同時多発テロのあった２００１年の９月には、ラムズフェルド国防長官が北朝鮮を『ならずもの国家』としたのに対し、パウエル国務長官は米朝間の対話を継続すべきだと発言しています。
中東和平のため、２００２年４月にイスラエルを訪問したときはアラファト議長にも会見する予定だったようですが、訪問前後の自爆テロで白紙に戻り、調停は失敗に終わっています。
２００２年９月にはイラク攻撃を急ごうとするブッシュ大統領に、国連の決議や各国の意見を重視するよう説得したことが伝えられていますが、今年（２００３年）の２月には国連の安保理決議でイラク攻撃の必要性を訴えています。
これまで一貫して米国の暴走をくい止めようとして動いてきたように思われるパウエル氏の脳裏に何がよぎったのでしょうか？
-2003/2/15
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『パウエル長官』はどんな人なのか？