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北朝鮮はこれからどうなるのか?


 現在の北朝鮮の指導者らにとって望ましいシナリオは中国のように市場だけ開放して体制を維持する中国型で、最悪のシナリオとしてはアメリカによって空爆を受けて崩壊するアフガン型だろうと思います。実際のところはどうなるのか、第三のシナリオの可能性は無いのか、このコラムで考えてみたいと思います。


<中国型の可能性>

 北朝鮮は1995年以降、食糧不足のために援助をもとめて各国との国交正常化に動き始めていたようです。2000年12月には英と国交正常化交渉を行っています。同じ月には日本から強制徴用、慰安婦問題で賠償訴訟を推進しようとする動きがありました。日本からは村山元総理らの代表団が訪朝し、北朝鮮が望む賠償ともとれる援助を提案したようですが、日本からの国交正常化の提案は拒否されています。

 昨年(2001年)2月にはカナダと国交を結びますが、北朝鮮駐在のドイツ利益代表部代表は北朝鮮では’計画経済路線’を画期的に方向転換しようとする徴候はないと指摘しています。

 北朝鮮が困窮し始めた最大の原因は絶大なる援助国ソビエト連邦を失ったからだろうと思います。代わりに援助してくれる国を求めて国交正常化の動きを見せていたわけですが、ドイツの利益代表部が指摘していたように、このときにはまだ、市場開放の意志は無かったことが分かります。

 2001年に入った1月15日、金正日総書記は2000人とも伝えられている警備隊を引き連れ、特別列車に乗って平壌を出発します。16日に上海に到着すると精力的に市内を見て回りました。ここで中国の市場開放政策が正しかったことを確認したとされています。

 さらに昨年の北朝鮮では国勢調査も行われていたようです。1995年以来6年ぶりです。結果は行方不明者250万人。行方不明者と呼んではいますが、これが食糧不足が原因の死亡であることは北朝鮮の指導者も十分承知しているはずです。はっきりと数字で示されたことが”このままでは自滅する”という危機感を生んだのかも知れません。

 ワールドカップが終わった7月1日、『経済管理改善措置』が動き始めました。これは北朝鮮が中国型を選択したことを示す意思表示であると言えます。

 以来、9月にはコメが3倍に値上がりしたり、ウォンの対ドルレートが下がったり(闇市では1ドル350ウォンで取引)しますが、食糧不足も相変わらずで一部市場でコメが底をつき、トウモロコシもなくなったという報道もあります。国際食糧計画(WFP)は最近になって、北朝鮮では300万人が深刻な食糧不足状態にあると特別の声明を出していますが、日本では拉致問題にかき消されて伝わりにくくなっています。

 市場開放についての象徴的な出来事は北朝鮮が第二の香港を北朝鮮に作ろうとしていることでしょうか。9月20日には中朝国境の新義州(しんいじゅ)に独自の立法機関設置が発表されました。金正日労働党総書記が直接監督しているとされるこの市場開放で、新義州特別行政区の行政長官に任命された楊斌(ヤン・ビン)氏が記者団に明らかにしたのは以下の通りです。

1)特区では米ドルを公定通貨とする
2)特区では輸出入関税が全廃され、14%の所得税を導入する
3)中国人客を当て込んだカジノを開設予定
4)日本、韓国市場向けの野菜を生産する
5)中国人約二十万人や教育のある北朝鮮青年を労働力として特区に移住させる


<アフガン型の可能性>

 最近の北朝鮮の動きをみてみると、北朝鮮が中国型を目指して動き出していることがはっきりしてきます。もちろん、中国型であるということは市場は開放するが、労働党や軍の組織はそのまま変わらないということを意味します。組織簡素化等の改革は進められているようですが、これは逆に組織を維持することが前提になっていると言えます。

 北朝鮮が目指す現在の中国が日本やアメリカにとって望ましい国かというとそうではありません。経済的に豊かになって驚異を与えることになるからという理由ではありません。豊かな経済を目指すのは国として当たり前だし、それ自体を非難はできません。

 アメリカが最近になって中国で続いている人権問題に目くじらを立てなくなったのは中国の経済力を無視できなくなったからだとも言われています。人はパンのみのために生きるわけではないが、パンは必要だということでしょうか?

 どんな組織でもそこで起きた事実を隠すことによって腐敗してゆきます。それは組織が怠ける性質を持った人間によって構成されているからだろうと思います。怠ける人間の性質が悪いわけではないのでしょうが、中身が見えない隠された組織の中ではそうした人間の性質が純粋培養されて増殖が進むようです。

 これは尊い名前がついた組織も同じです。志(こころざし)が高かろうが低くかろうが関係ありません。隠れた組織はどんなに誇り高き人をも誘惑して悪の道に誘い、そこで犯した罪を隠すためにさらに隠蔽(いんぺい)体質になります。ここで一番困ることは隠すことを正当化してしまう悲しい人間を次々に作り上げてしまうことです。

 これらの不幸を防ぐ方法は公開することです。人前に出るとお行儀が良くなるという人間の性質を利用することです。これは民主的な国にはどうしても必要です。日本やアメリカにとって、望ましい北朝鮮とは現在の体制ではあり得ません。中国のように経済力を持ってしまったら、かえってやりにくくなります。

 300万人もの人達を深刻な食糧難に追いやる北朝鮮の現在の体制そのものを壊す必要がある、そのためには空爆が必要だとアメリカが主張したらどうなるでしょうか?


<第三のシナリオ>

 アメリカのような多民族国家の建前は”人々の自由な意志を尊重すること”だろうと思います。国も会員制の倶楽部のように、会員がイヤになれば自分に合った別の倶楽部(国)に移ることが出来るという考え方です。

 北朝鮮や中国のような社会主義が悪くてアメリカや日本のような資本主義が良いと言うより、何をやっているのか、何を考えているのか分からない秘密主義が国や組織やそこで働く人々を腐敗させ、退化させているのだとすれば、いずれ北朝鮮や中国でも自由選挙が必要になるだろうと思います。

 さらに市場開放や自由化が進んでしまった後、金正日総書記や党、そして軍の幹部の人達をどう処遇するのか、もし反体制派として処刑を含む処分をするというのであれば、必死になって体制維持に動き、事実をひたすら隠そうとするはずです。日本でも終戦直後には、戦争裁判を有利にするために「軍関係の資料を残さず焼いてしまえ」という最後の命令が軍から下ったようです。長野オリンピックに関する資料もよっぽど都合が悪いことをやったのでしょうか、残さず処分されたことも有名です。

 革命的に北朝鮮の体制が崩壊するハードランニングは話としてはおもしろいのですが、崩壊時に何が起こるか分かりません。穏やかに民主化(というよりオープン化)へと進むソフトランニングは歴史的には皆無で、限りなく不可能に近いとされています。

 たとえば、朝鮮労働党総書記『金正日』と新千年民主党総裁『金大中』が統一国家で大統領選を闘うという、今ならどう考えてもあり得ないことも含めて、第三のシナリオを実現するために知恵を絞った方が日本にとっても良いのではないかと考えたりしています。

-2002/10/06 初版
-2002/10/13 一部訂正


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