ただその日暮らしでのんびり生きるか、それとも目標を持ってその実現のためにあらゆる手を打ちながら生きてゆくか、と問われれば、目標を持った方が良いと答える人が多いはずです。たとえ目標には到達しなくとも、その過程でいろいろ得るものがあるからというのがその理由です。目標とは馬の前の人参のようなもので、そこに到達することを夢見ながらもけっして到達することはなく、自分で自分をだましだまし動かしていると言えなくもありません。
国家にも意思や目標があり、それはたいてい一番基本的な法律に書かれています。日本なら日本国憲法です。北朝鮮（朝鮮民主主義人民共和国）には国家統一という目標があります。
それはもちろん韓国の体制にあわせることではなく、現在の北朝鮮のように朝鮮労働党一党によって支配する体制による統一です。北朝鮮の体制で統一するためには、①その体制が優れていることを内外に示すこと、②韓国の体制が劣っていることを世に示すこと、の二つが必要になります。
韓国がその国力を世界に示すことになった１９８８年のソウル・オリンピックが開催されようとしていたとき、そのオリンピックを断固として阻止せよと言う命令が下ったそうです。そこでスパイが動員され大韓航空機が空中爆破されます。その後明らかになったのは金賢姫（キム・ヒョンヒ）という北朝鮮スパイと、李恩恵という拉致された日本人教官の存在でした。
そもそも朝鮮が南北に分かれてしまったのは日本の植民地支配があったからであり、統一の過程で日本人が被害を被っても仕方がない、と自分の行為を正当化しながら、北朝鮮のスパイは日本人を拉致するのだそうです。
そして日本人らしさを備えたスパイを養成し、日本人になりすませば、世界中どこにゆくにも優遇されます。世界中で気前よくお金を落としてくれる日本人は他の発展途上国の人に比べればいろいろな国への入国も比較的容易です。
祖国統一という目標が無くならない限り、あらゆる職業の日本人の教育係は今でも必要とされることになり、今後も日本人の拉致は続くということになります。
北朝鮮の体制が優れていることを内外に示すために、ワールドカップを挟んで、１０万人のマスゲーム、『アリラン』公演が行われています。４月２９日から６月２９日までです。誇示するだけではなく、開催期間中に１０万人の観光客を見込み、そこで落とされる外貨にも期待しているようです。
ソウル・オリンピックの開催に先だって大韓航空機が空中爆破されたように、ワールドカップ阻止のためにまた何かが起きるのでしょうか？当時に比べればそれも難しくなっていることは確かです。というのも、北朝鮮では食糧不足が今でも続いているからです。
北朝鮮に食料を運んでいる国連の機関WFP（世界食糧計画）では４月１２日に世界中からの寄付が無くなれば、今年の夏には北朝鮮の人口の三分の一に当たる６４０万人が飢饉に陥る可能性があると訴えています。
北朝鮮は否定しているようですが、１９９５年の洪水以来、３５０万人が餓死した、正確に言うと飢餓が原因で命を縮めたという推計もあります。最近日本に対して態度が穏やかになったように見せたり、米国との対話に応じようとしているのも、この食糧不足のせいかもしれません。
穀物はその多くが秋に収穫されるため、春先から夏の間が一番不足することになります。しかし、今はアフガニスタンの方に関心が向いています。援助も関心がなくなれば途絶えがちです。北朝鮮が不利なのは、アフガニスタンと違って、内情を報告しようにもジャーナリストが入れないことです。ニュースにならなければ、無関心になります。無関心になれば、援助も減ってきます。食糧不足が深刻であれば、北朝鮮は自ら態度を変える必要がありそうです。そうしないと、人口がどんどん減っていって、日本の人口の十分の一くらい、つまり１２００万人くらいにまで減ってしまうことが無いとは言えないし、国力がさらに衰えて祖国統一が限りなく不可能に近くなってしまうからです。
-2002/5/2 初版
-2002/6/8 更新（地図追加）
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北朝鮮はこれからどうしようとしているのか？