これは海外駐在の経験がある人たちからよく聞く話ですが、既婚者が海外駐在を命じられた場合、家族で駐在しようとすると当然のことながら奥さんの意志を尋ねることになります。二つ返事で喜んで同意してくれる人もいれば、なんとかして行かなくても済むように抵抗を試みる人もいると言います。
アメリカに向かおうとしていた知人は奥さんから強く反対されました。子供は小学校に入ったばかりだし、テロが起きたばかりで危険だし・・・。「アメリカでも同じ冷蔵庫が使えるの?」とか、「家具はどうするの?」など、沸き上がる疑問に質問攻めに合うという話を聞きながら、奥さんの気持ちが分かるような気がしました。行かなくても済むような理由を必死で探していたのでしょう。
やがて年が明け、覚悟を決めざるを得なくなるときも過ぎ春になり、学年末を境に家族四人の大移動が始まりました。それからもう半年が経ちます。ある人は半年が境だと言います。つまり、それまでは日本に帰りたくて仕方ないが、その時期を過ぎると新しい土地に慣れ、良さにも気がつき始めるからだそうです。
おそらく、行きたくないと考えている人ほど異国の地で発見することも多いのではないか、特にアメリカの場合、そのなかで一番大きいのは開放感ではないかという気がします。
日本を離れたくないと考えている人ほど、日本のなかの世間に自分を同化させ、それにある程度成功している人ではないかとも思えます。知らない間に身につけてしまった日本での処世術です。
殆どの日本人がいつの間にか皆と同じ方向を向くことが善だと考えているとすれば、そうした考え方になじめない人は”自分は仲間はずれだ”と言う疎外感を感じることになります。皆が同じ方向を向くことは貧しかった日本を豊かにするためにどうしても必要だったのでしょう。しかし、もうそんな時代は終わりました。もう十分に金銭的には豊かになってしまったからです。
これ以上の豊かさを目指そうとすれば、それぞれがそれぞれの特性に合わせて、自分なりの豊かさを探すしかありません。そんなときには、自分自身でさえ気が付いていない世間の常識というしがらみが邪魔になります。
アメリカは建国から200年ちょっとしか経っていない歴史の浅い国です。その分物足りなさも感じますが、200年ちょっと前は大国イギリスから独立して建国を成し遂げています。イギリスという島国とのしがらみ(税や思想のお仕着せ)から逃れるために生まれた国とも言えます。
「街を歩けば同じ通りにランニングシャツを着て歩いている人もいれば、コートを着て歩いている人もいる。世間の目はどこにも光っていない。」そんなアメリカ独特の開放感は住んでみないと分からないのかも知れません。
-2002/9/20
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