ソクラテスという名の偉大な哲学者は、裁判で死刑になったことでも有名ですが、なぜ死刑になったのでしょうか?「もうやりません」と謝れば無罪だったらしいのです。ところがソクラテスはやめなかった。知恵を求める活動をやめようとしませんでした。
ソクラテスという人はかなり頑固な人だったに違いありません。頑固な人で思い出すのはアニメ『巨人の星』に登場する、頑固一徹の『星一徹』。日が沈んだ後に金星を指さし、あれこそがお前が目指すべき『巨人の星』だと勝手に星に名前を付け、息子を厳しく育て、巨人の星にした人です。頑固さ余ってちゃぶ台をひっくり返すシーンも有名です。
同じく頑固だったソクラテスが追いかけていたのは、知恵(ソフィア)という名の星だった、と言えそうです。ところがここで疑問が湧いてきます。ソクラテスの言う知恵とは、人生を幸福に過ごすための知恵のはずです。ところが、それを求めたがためにソクラテスはいつも貧乏で、しかも仲間からは嫌われ、そしてついに告発され死刑になってしまいました。
これが幸せというものでしょうか?
このあたりを解りにくくしているのは、ソクラテスが人生を幸福に暮らすための知恵を身につけることを人生の目標にしたということではないか、と思います。
たとえば、世界一のサッカー選手になるとか、世界一の料理人になることが目標なら、まずは切磋琢磨し自分を磨きあげ、ボールや包丁という道具使いの達人を目指すはずです。
ソクラテスは、自らの目標に近づくために、論駁(ろんばく)という議論(道具)の達人になりました。論駁とは 相手の説の間違いを指摘して反論することです。つまり、口げんかの達人です。
口げんかの達人なら議論の相手からは嫌われそうです。しかも、人生を幸福に暮らすための知恵が不十分であること(無知)を指摘したりするので嫌われても、告発されても仕方がありません。
死刑にはなりましたが、おそらくソクラテスは目標に近づくプロセスを楽しむことで自らの人生を幸福にしていたんだと思います。そしてその後の人類は、彼が残した結果を楽しんでいる、という気がします。
-2006/4/8
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