18日朝、韓国の大邱(てぐ)市で起きた地下鉄放火事件はその被害が甚大であることから地下鉄での安全対策に力点を置いた報道が多いようです。ここでは放火の動機について考えてみたいと思います。
容疑者は56歳の男性で、医療事件によって右半身が不自由になり、医者に仕返しをしたいと考えていたものの、家族に反対されたためそれは実行しなかったと聞いています。
地下鉄で放火し多くの人たちを巻き添えにして死のうと考えていた、とも伝えられています。何を語ったのかではなく、どういう事実があったのかという点に注目すると、以下のようになると思います。
1)医療事故で右半身が不自由になった
2)医療機関に仕返しをしようと考えていたが実現しなかった
3)地下鉄でガソリンをまいた
”うつ”状態で将来を悲観していた、という見方もあるようですが、”うつ”なら事件を起こす元気は無いはずです。原因は社会に対する”怒り”ではないか、と考えています。
人はさまざまな理由で怒りが沸きますが、そのなかには不条理さ、この世があるべき姿になっていないことに対する怒りが含まれています。不公平な社会に対する怒りで、自分より幸福であると思われる普通の人たちを不幸にすることで帳尻を合わせようとする論理で、こうした考えは通常道徳観によって否定されるのでしょうが、そうした道徳観を麻痺させるのが怒りだろうと思います。
ガソリンが手に入ればガソリンをまき、銃が手に入れば銃をつかった事件を起こしていたかも知れません。銃があるから銃による事件が起こるという考え方は、”出来心”による事件を防ぐことになっても、”社会的な不公平”にたいする怒りが原因の場合は、使う道具が変わるだけで、根本的な解決にはならない、と思います。こうした”怒り”はどうやって沈静化すれば良いのでしょうか?
米国に比べ、圧倒的に銃による犯罪が少ないカナダの例が参考になるかも知れません。アメリカでは全米ライフル協会の力が強く、銃が自由に手に入るとされています。一方カナダではライセンス制度をとっているようですが銃を手に入れるのは容易で、7000万人の人口に3000万の銃が出回っており、米国の2億程度と聞いています。人口比で考えれば米国よりちょっと少ない程度だと言えます。
不思議なのは銃による死者の数にかなりの差があることです。カナダはだいたい日本と似たような数字で年間数十人程度ですが米国は数万人のオーダーでその違いは二桁です。
この違いは健康保険などの社会保障制度にみられるように、国による考え方の違いによるのではないかという指摘があります。米国には日本やカナダのように健康保険制度は整備されておらず、治療費が異常に高いようです。アメリカンドリームは運良くリッチになれた人だけのものなのでしょうか?
社会の中のやりきれない不公平感を減らすことが、地下鉄放火のような事件による被害を減らすもう一つの方法なのだろうと思います。
-2003/2/20
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