電話利用者の利便性向上のためにできたとされる”マイライン”を調べたときに感じたのは電話料金制度の複雑さとわかりにくさでした。しかし、収穫だったのは”なぜ解りにくいのか”ということが解ったような気がしたことです。それは、
”電話会社の既得権を守るため”
でした。どの電話会社が得なのかよく分からないので利用者の殆どが別の電話会社に乗り換えようとしないため、すでに加入者を得ているところほど得をするというわけです。
解りにくくして周囲に論理上の厚い壁をつくり、真実から遠ざけることによって身を守るという手法は人間の自己防衛本能と言えそうです。本能はそのことを非難したくらいで引き下がるほど生やさしいものではありません。その頑(かたく)なさは”人間は食うためなら泥棒でもなんでもする”という事実からも想像できます。
しかし電話は全国一律XX円というわかりやすい世界へ急速に向かっています。取り決めごとを小さく薄く書いてわかりにくさの象徴とも言われる約款(やっかん)を持つ生命保険もわかりにくいところほど淘汰される時代になってきました。これは、
”解りにくくすることが自己防衛にはつながらない時代になってきている”
ということだろうと思います。
<反対の理由をうまく説明できない反対者たち>
竹中大臣が景気の足を引っ張っているとされる不良債権の処理を急いでやろうとしたところ、野党は反対、与党3党も反対、大手7銀行は”船団”を組んで反対会見を開くという騒ぎになりました。
ところが不思議なことに、反対者がなぜ反対しているのかいろいろなメディアを眺めてもよく解りません。
<想像される反対理由>
竹中平蔵大臣が検討している「繰り延べ資産」の見直しは現在認められている資産を国際基準に近づけて評価しようとしていることなので、別におかしなことをやろうとしている訳ではないようです。
国際基準に合わせて圧縮するとどうなるかというと、多くの銀行の自己資本比率が下がります。銀行系シンクタンクの日本総合研究所が25日に発表した試算によれば大手4グループの自己資本比率は現状の10.74%から6.59%に低下するとしています。
こうなると国際基準である自己資本比率の8%より低くなります。これはそうした銀行が不健全な経営状況にあることを示すことになります。
不健全なままでは困るので、そのような銀行には公的資金を入れて健全にし、その代わり経営者にも責任を取ってもらおうというわけです。
こうなると困るのは責任を取らされる銀行の経営者達です。竹中案に反対するのはもはや本能と言えそうです。政治家が反対する理由は何でしょうか?一番大きな理由は竹中大臣が事前に相談しなかったからだろうと思います。
しかし、相談したらその時点でつぶされてしまいます。別に景気を良くするための案を持っていなくても勢いよく反対はできるのでそこまでは威勢が良いのですが、「それなら取りやめた後どうするのか」と問われると大人しくなってしまいます。
いくら説明を聞いても反対の理由がよく分からない場合、それは本当の理由を隠しているからだろうと思います。専門知識を持っている人ほど、わざと解りにくく説明して煙に巻こうとします。本当に理解している人なら、わかりやすく説明できるはずだからです。
竹中大臣の発言はわかりにくさで身を守ろうとする人々がつくっている壁に仕掛けた爆弾なのかも知れません。
-2002/10/27
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