女性二人が夕方の電車の中で浴衣について語っていました。都内のシティホテルに勤めているらしい二人のうちの一人が、盆踊りで着る浴衣を買いに出かけたようです。二人の話を聞きながら、一人はもうすでに「浴衣美人」への道を歩んでいるように感じました。
浴衣美人となるためにはまず人の視線を浴びねばなりません。人の視線を意識することによってわが身を磨くことになるからです。店に行った彼女は、目移りがするくらいに多くの浴衣に囲まれ、どれにしようかと試着することになったようです。ご存知のように和服の試着は洋服と異なりかなりオープンです。試着を繰り返すうちに店員が集まりギャラリーが形成され、さらに店に来ていたおばあさんまでそのギャラリーに加わったそうです。
しかしただ浴びるだけでは不十分です。その時間は長くなければなりません。やっとのことで着物が決まっても次に帯が待っています。帯が決まれば次は下駄。と浴衣とは言え和服選びは時間がかかります。その間中「着せ替え人形」になるわけです。
なぜ試着に時間がかかるのでしょうか?店員には和服好きが多いだろうと推測できるものの、値も張らず利益も薄いと思える浴衣の試着に熱が入るのは、もちろんこの機会に和服のファンを増やしたいがためです。二十歳になれば成人式用の振袖、その後も訪問着として和服に親しんでくれるかもしれません。
さて、浴衣美人になるためには、人の視線を長く浴びるだけではまだ不十分です。美人にふさわしく、惚れ惚れするようなスタイルも必要です。ここで和服の特徴が生きてきます。和服の特徴は帯を巻くことですが、ここに重要なポイントがあります。ただ腹の上に巻いて縛っているわけではありません。帯が着物を、いや全身を上半身と下半身に分けてくれています。しかも、脚が長く見える分け方です。帯から下が全部脚であるかの如く見せてしまうのが和服の特徴です。
しかし、気をつけなければならないこともあります。もともと背が高く脚が長い人が和服を着ると、なんとなくバランスが悪くなります。このあたりは、着こなしで補うしかありません。
浴衣美人への道も、短くはないようです。
-2006/6/22
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