もう少しあるいはずっと独身を通してみたいとどこかで考えている男にとって手料理は甘い罠にも思えるかもしれません。その甘い世界に浸ることが無けれそれを失った後の淋しさも味わうこともありません。しかしその甘い世界からの誘惑を断ち切ることはむずかしいことです。
男も女も自分だけのために作る料理は驚くほど質素です。冷たいものをそのまま暖めずに食べることさえあります。空腹を満たすためだけに食べることもあり、それは災いであるとさえ思える瞬間です。
その苦行にも似た食の世界を天国に変えてしまう手料理。手料理が大事な人のために作るのなら、その人が持つ知恵の全てを使って作ろうとします。それがゆえにまずかろう筈もありません。
天国の入り口とも言える、これから手料理を口にしようとする男が考えることはその天国に居続けるためには作ってくれた人を失ってはいけないということ。手料理が怖いながらもうれしいのはそれがどこに行っても売っていないこと。自分だけのために作ってくれた料理がこの世に二つもあろう筈がありません。
それがどんな形であれ、自分を認めてくれた人だけにしか作れない美味い手料理をうれしいと思わないのはむずかしいことです。
-2001/1/9
●当サイトは全ページリンク・フリーです。連絡も要りません。
Copyright(C) 2000-2006 xSUNx(サン) all rights reserved.