袋麺「
トムヤムラーメン エビ味」を手に入れた私は、早速ガスコンロの前に立ち、袋の裏面の説明を見た。原産国はタイとある。日本で生まれたインスタントラーメンは、調理の簡便さや独特の味わいにより、いまや世界中に広がり各国で製造されている。この袋麺は、表示は日本語だがタイ王国で作られているようだ。
鍋で400mlのお湯を沸かし麺を入れて2〜3分ゆでる。麺がほぐれたら火をとめてスープを入れ混ぜ合わせる。スープが豪華なような気がするが、作り方そのものは他の袋麺と同じだ。鍋から器に移しテーブルに運んだ。
テーブルに置かれたトムヤムラーメンの前に座ると、異国情緒溢れる香りに包まれた。ピーナッツをすりつぶし線香をませたような匂いがする。タイは仏教国だが、イスラム系やインド系の国にも多い香辛料の利いた香りがする。東南アジアから南アジアにいたる世界地図と、独特の香りの香水を前にして、これほどいい香りは無い、と素直な笑顔を浮かべるインド人の顔が脳裏に浮かんだ。
器に顔を近づけるのに抵抗があったが、まずスープを味わった。唐辛子のきつい辛さが木の実の甘さでマイルドになっているが、辛いことに変わりは無い。唐辛子が発見されたとされる南アメリカの地図と、唐辛子を船で世界中に売り歩いたとされるポルトガル人やスペイン人の姿が脳裏に浮かんだ。
大航海時代以降に唐辛子はアジア各国に伝わり、その中でもタイ王国は唐辛子が一番使われる国になったらしい。たしかにその情緒を伝えるに余りある香りがする。スープにはコクがあり麺にもさわやかな食感が有るので、タイで人気があるのも分かるような気がする。
しかし、たいていの日本人にとっては、たとえば手元に残っているポーク味の、予想される香りの壁を越えて食べるためには、これから航海に出る船に乗り込むくらいの、勇気が要るような気がする。
-2006/1/29
●当サイトは全ページリンク・フリーです。連絡も要りません。
Copyright(C) 2000-2006 xSUNx(サン) all rights reserved.