今頃の時期は戦争中の話を耳にする機会が多い。その中の一つに沖縄戦で捕虜になったKさんの体験談があった。体験を語ったKさんは当時14歳の少年軍人。沖縄で捕虜になり、6月の暑い日に捕虜としてハワイへ向かう貨物船に乗ることになった。
当時の捕虜は家畜同様に扱われ、衣類も身につけずパンツさえも脱がされたすっぽんぽんのまま牛や馬のようにもっこに乗って貨物船まで運ばれた。捕虜の中には先のことが不安になったのか海に飛び込む人もいたらしい。貨物室の中でも裸だから軍人としての階級も名前も分からない。その中には手足もない重傷の人や病人もいたという。
時間になると白いご飯にハムのようなおかずが上から降りてきた。当時の日本人にとってはごちそうである。先を争って奪うように食べ始めた。従ってぼやぼやしていると食うものは何もなくなってしまう。実に見苦しい光景だったらしい。それが一日、二日と経ったとき、Kさんは何も食べずにじっと後ろでその様子をみている捕虜の一人に気がついた。
その人は二日目か三日目になって、こう口を開いたらしい。
「君たちには日本人としての誇りは無いのか?捕虜になっても誇りを捨ててはいけない。もし、日本人としての誇りがあるなら、食べ物は弱い者が先に食べるべきだ。」これ以来、ハッと我に返ったのか行儀が良くなり、病気の人にも食べ物が行き渡るようになり、秩序を取り戻したらしい。
Kさんはその人に将校さんかどうか聞いてみたらしいが否定も肯定もしなかったという。
日本人として日本の伝統や文化に誇りを持って生きた方がいい。一人一人の個人だって、自分にしかない個性に誇りを持って生きた方がいい。その方がお行儀も良くなるに違いない。
■参考文献・番組
- 殉国―陸軍二等兵比嘉真一
Kさんの話は吉村昭さんの手で上のタイトルの小説にまとめられています。
文春文庫 販売価格369円
- こころの時代
体験談が放送された番組。NHKラジオ「こころの時代」AM4:00〜5:00放送。
-2001/8/13
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