子供の頃に持った素朴な疑問も結局答えが出せずにアッと言うまに月日が過ぎて、あらためてその疑問を思い出すと、大人になってから解けたものもあれば、未だに解けないものもあります。物心が付いたときの疑問は以下のようなものでした。
- 自分はこの世で一番偉いのか？
- それとも自分はダメな人間なのか？
- 自分は誰なのか？
当然のことながら、自分がこの世で一番偉いはずはないということはすぐに気がつきました。もしかしたら、甘やかされ続けて、何でもやってもらえる人の場合、この考え方を続ける人もいるかも知れません。自分は宇宙の中心にいたとしても、この世が思い通りになるわけではないので、中心的な存在ではないということは分かります。でも世の中には「もしかしてこの人は自分が一番偉いと考えているのではないだろうか？」と考えたくなるような人がいたりします。
自分はダメ人間なのかとも考えたこともあります。これは時々大人になっても考えることはありますが・・・。子供の頃は自分は両親の子供だと考えることで、ある程度の歯止めにはなっていました。「少なくとも自分は底の知れないダメ人間ではないだろう」と考えたわけです。しかし、この考え方は親がとんでもない犯罪者であった場合は、どこで自分がダメ人間では無いという根拠を探したらよいのかと悩みそうです。今なら、両親から遺伝子を受け継いでも、親とは違う個性を持つことになるし、生まれながらのダメ人間は存在しないことがすでに証明されていると考えています。
さて自分は誰なのか？自分とは何なのかという問いに対しては未だに答えが出ていません。自分には体がついていて、腹が空いたり、喜んだり、痛い思いをするときに一番強く感じるのは自分自身に対してです。本などを読んでいると物心が付いて、自分という人間と他人を区別できるようになることを”自我のめざめ”と呼ぶようです。この”自我”という言葉ほどわかりにくい言葉はありません。辞書を引いたり、本を読んでも結局よく分からないままです。もしかしたら、書いた本人も分からないのではないかと考えたほどです。
さすがに今頃になると、考えることの好きな人達がこのことについてどう考えていたのかを知ることが出来ます。世の権力者やそうでは無い人達にも影響を与え続けてきた先人らがどのように考えていたのか編者なりの解釈を加えると以下のようになります。
- デカルト【Rene Descartes（1596-1650）】
フランスの哲学者・数学者・自然学者であったデカルトは「他人はいてもいなくても自分は存在する。」そして、「我思うよう故に我あり。」と考えました。これは世界中にただ一人で生きていても自分のことを考えることによって自分は存在するということでしょうか？しかし、他国があるから日本のことを日本と呼ぶように日本人だけであれば日本を意識しないような気もします。
- カント【Immanuel Kant（1724-1804） 】
ドイツの哲学者カントはデカルトの考え方をさらに進めました。自分で稼いだ金や築いた財産は自分のもの、これは個人主義、核家族の始まりだという気がします。この考え方は今でも続いています。
- キルケゴール【Soren Kierkegaard（1813-1855） 】
デンマークの思想家キルケゴールは、いやその考え方は間違っている、他人や神なくして自分は存在しないと考えました。編者も神さまがいると考えた方が分かりやすいし、親や兄弟がいることによって、助かっている自分がいるというのはよく感じるところです。
- マルクス【Karl Marx（1818-1883）】
ドイツの経済学者・哲学者・革命家でもあったマルクスは「社会があって始めて自分というものを意識する。」と主張しました。たしかに最も小さな社会と言える家庭や、学校、会社、地域社会、国、世界などで、他の人とは違う自分を意識します。
- ニーチェ【Friedrich Wilhelm Nietzsche（1844-1900） 】
ドイツの哲学者であり「超人」としての生き方を主張したニーチェは「鏡の中の自分をみてはじめて自分を意識する。したがって自我というものは存在しない。」と考えたようです。この考え方は、たしかに鏡の中にしか自分はいないのかも知れないが、ちょっと違うと編者は考えます。
- 仏陀【Buddha：釈迦の尊称、釈迦の本名はゴータマ・シッタルダ（紀元前５世紀頃）]
自分という存在を強く意識すること自体が問題（苦しみ）になる。
結論を言うと、どんな偉い人でも言うことがまちまちで、決まった考え方は無いから、「自分で考えるしかない」と言うことのようです。「”自我”（自分）のことは自分で考えろ」と言うことでしょうか？
-2001/9/16
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自分とは何か？