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 図書館では無償で本を借りることができます。これは当たり前だと、多くの人は考えていることでしょう。しかし、図書館が普及して、歩いていけるところに図書館があり、推理小説やベストセラー小説など、読みたい本が揃っていて、しかもすべてタダで借りられるということになると、読者は本屋さんで本を買わなくなってしまいます。
 図書館の普及につれて、著作者の中から、図書館の存在が著作者の著作権を侵害しているのではないかという声が起こるようになりました。実は、こういう著作者の声は、ヨーロッパでは、半世紀も前から起こっていました。そこには、日本よりも図書館が普及していたという事情があるのかもしれませんし、小国が隣接している地域が多く、言語も似通っているので、自国の文芸文化を守ろうという意識が強かったのかもしれません。いずれにしても、現在ではほとんどの国において、図書館の貸出に対して、「公共貸与権」というものが設定され、主に国家の基金によって、著作者の補償金が支払われています。
 以下は、補償金制度を実施している国名と、その開始年です。ヨーロッパ以外の国も含まれています。日本でも同様の制度が確立されることを念願し、その実現に向けて、努力を続けたいと思います。

 デンマーク……………1946年
 ノルウェー……………1947年
 スウェーデン…………1954年
 フィンランド…………1961年
 アイスランド…………1968年
 ドイツ…………………1973年
 ニュージーランド……1973年
 オーストラリア………1974年
 オーストリア…………1977年
 イギリス………………1979年
 オランダ………………1986年
 カナダ…………………1986年
 イスラエル……………1987年
 フェロー諸島…………1988年
 グリーンランド………1993年
 モーリシャス…………1999年
 リトアニア……………2000年
 フランス………………2003年


【参考】
 図書館関係者の必読の書とされている『理想の公共図書館サービスのために−IFLA(国際図書館連盟)/UNESCO(ユネスコ)ガイドライン』(国際図書館連盟公共図書館分科会ワーキング・グループ編/山本順一訳/日本図書館協会発行)には、「公共貸出権」について、以下のように述べています。なお、公共貸出権と公共貸与権は、いずれも英語のパブリック・レンディング・ライト(Public Lending Right)の訳で、日本の図書館においては、「貸出」と「貸与」は同義語です(館内閲覧は貸与ではないと解釈されます)。通常は略して「公貸権」と呼ばれます。

 公共貸出権/いくつかの国では、公共図書館の館内利用および館外貸出に関連して、図書の創作にかかわった著作者およびその他の者に金銭的支払いを求める公共貸出権に関する立法が導入されている。大切なことは、公共貸出権にかかる支払いに要する資金を図書館の資料購入費から支出するべきでないということである。しかしながら、別途資金が手当てできれば、公共貸出権は、公共図書館の予算に影響を与えることなく、著作者を援助できる。また、やり方によっては、公共貸出権の実施を通じて、特定の著作者の書いた図書についての貸出に関する有用な統計を得ることが可能となる。ライブラリアンは、その経費が図書館予算から支出されないことを確実なものとしたうえで、公共貸出権制度の整備に参加することが望ましい。(山本順一訳)