〜道内プロ野球開幕戦実況に燃えた夜〜
入社式から1週間で、大一番はやって来ました。
4月8日。来年本拠地を北海道に移す日本ハムファイターズの今季の札幌ドームでの公式戦初戦にして、テレビ北海道の歴史上初のプロ野球のゴールデンタイム生中継のメイン実況。心地よい緊張感に包まれながら、春の雨に濡れる札幌ドームへ。
午後2時、解説の広瀬哲朗さん、ゲストの大沢啓二さんと打ち合わせ。迫力満点の風貌とは対照的に、ファイターズに、そしてプロ野球に対する深い愛情に満ちたお話を伺い、頭の中にはっきりと一本の道ができました。「このお二人にが気持ちよく、そして見ている野球ファンが気持ちよく感じてもらえる実況を!」あとは程よい高揚感とともにそのときを待つのみ。
午後6時3分プレイボール。放送は7時からだがすべてのプレーに実況をつけていく。すこしづつ試合の中に自分が入っていくのがわかる。これこれ、これです。約2年ぶりに味わう、スポーツ中継の最高の醍醐味。
放送開始から終了までは、もうノンストップ。頭脳と口をクロック・アップさせ、まさに思いのたけをぶつけっぱなし。
札幌ドームでの初勝利へ向け、スクイズあり、主砲小笠原のタイムリーあり、先発吉崎の好投あり、新鋭高橋信二のプロ初ホームランあり、そして対戦相手ブルーウエーブの必死の反撃ありと、盛りだくさんの試合展開を、実況アナとして、そしてひとりの野球ファンとして、堪能しつつ2時間は過ぎました。
願わくば「ファイターズ、来年からの本拠地、札幌ドームで初勝利!」という歴史的実況をしたかったのですが、これも勝負の世界。産みの苦しみあればこそ、勝利の喜びはひとしおと考えましょう。
ヒルマン監督という稀代のリーダーを迎え、「古いコートを脱ぎ捨て」大胆に新たな姿に変わろうと模索する今のファイターズの姿を、この春から新たな環境に身をおいた私は、自分を重ねるような気持ちで見ています。万事劇画のようにうまくいくはずはありませんが、踏み出さなければ何も変わらない。踏み出した「勇者=ファイター」とともに、私も一歩一歩踏み出したいと強く思います。
実況終了後、家路へ向かう深夜の地下鉄の社内で「Fighters」のロゴの入ったジャンパーを着た人を見ました。道民球団としての種はまかれ、今は双葉が出たくらいのところ。しかし、いつか太い幹になり、たわわに果実をつけた樹になるはずです。そして、そう思えることが幸せなんだ、と思えたひとときでした。
次の実況は5月6日のライオンズ戦。そのときまで、私も少しでも大きな幹となって、実況席につきたいと思います。
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